ボルヘス「幻獣辞典」のバロメッツ

ひつじ話

タタールの羊、別名をバロメッツ、リコポディウム・バロメッツ、シナ・バロメッツともいう植物は、黄金の毛に覆われた羊の形をしている。それは四、五本の根茎で立っている。サー・トマス・ブラウンは「伝染性謬見」(一六四六)のなかで、それについてこう記している。
おおいに不思議とされているバロメッツ、タタールの羊なるあの奇妙な半草半獣ないし植物は、オオカミが好んで食とし、羊の恰好をしており、折ると血のごとき汁を出し、まわりの草木が食いつくされるまで生きつづける。
ほかの怪獣はさまざまな種類の動物を結合させてできあがる。バロメッツは動物界と植物界の融合なのだ。

ホイヘ・ルイス・ボルヘスの「幻獣辞典」から、バロメッツの項を。どうも植物羊には2タイプがあるようなのですが、ボルヘスの語るバロメッツは、以前ご紹介したこちらの、ふたつめのほうになるでしょうか。ちなみに、ひとつめの「莢から生まれる子羊」は、マンデヴィルの「東方旅行記」のもの。

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モンティ・パイソン 飛ぶ羊

ひつじ春夏秋冬

ロンドン紳士

おう、そいつはいいですな。あのー…あれは羊、ですよね?
田舎者

ああ。
ロンドン紳士

はあ、そう思いました。ただその、木の上にいるのはなぜ?
田舎者

いい質問だ。ここ何週間か俺もそのことを考えてた。俺の結論じゃあ、奴らは巣を作ってる。
ロンドン紳士

巣を?
田舎者

そう。
ロンドン紳士

鳥みたいに?
田舎者

その通り。これは俺の意見だが、羊どもは誤解してるんだ、自分たちは鳥であると。奴らの行動をよく見ろ。まず第一に、後ろ足で辺りをぴょんぴょん跳ぶ傾向が見られること。それに、木から木へと飛び移ろうと試みてるのも証拠のひとつだ。注意すべき点は、奴らはそんなに飛べない…逆さまに落ちる。
メエーメエー…パタパタパタ…ウェー…ドサッ

画面にひつじは出てきませんが、結構飛んでます。(落ちるけど)

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鳥獣人物戯画 乙巻

ひつじ話

「鳥獣人物戯画 乙巻」第23?25紙
甲巻とはがらりと雰囲気が変わる乙巻。 (略) これは動物を描くための絵手本、または寺院で教育を受ける子どもたちのための動物図鑑だったのだろう。乙巻の筆者は甲巻の筆者と同一と分析されており、おそらく密教系の絵仏師だった。密教の仏画で尊像の乗り物として描かれる動物と、乙巻の動物とは、厳しい表情や体形がよく似ている。それでも親子で描かれた動物には愛嬌がある。
「小学館ウイークリーブック 週刊日本の美をめぐる№15 アニメのはじまり 鳥獣戯画」 

鳥獣人物戯画は、甲巻が非常に有名ですが、乙巻も捨てがたいのです。羊(山羊っぽいですが)もいるし。高山寺所蔵ですが、保管は京都国立博物館で行われています。

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十二支グッズよりどり

ひつじグッズ

だるま十二支  美濃焼十二支土鈴  金太郎あめ
笠松町歴史民俗資料室へご寄贈申しあげたものの内、一応写真にして見てもらえそうなものだけを選び、作られている材料別に並べて、人々に親しまれ愛されている十二支の姿二八四点をここに紹介した。十二支庶民文化財としてはまさに氷山の一角に過ぎない。 (略) 私の場合、十二支が揃っていることを条件の一つにしていたので、現在も十二年かけて揃うのを待っているものが多くある。

上から、川崎大師葵商店のだるま、美濃焼の土鈴、金太郎あめ、の十二支です。
文章は、この「十二支庶民文化財図録」の編著者みやざき・じゅん氏によるあとがき。良いなぁ、こういうの。

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長澤廬雪「双羊図」

ひつじ話

廬雪「双羊図」

江戸中期、円山四条派のひとりである長澤廬雪の「双羊図」です。おっとりとした羊が二頭。

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抱朴子 登渉篇

ひつじ話

およそ仙道を修行し、仙薬を煉ろうとする者、それに戦乱を避け隠棲する者、すべて山に入らぬものはない。しかし山に入る法を知らないと、禍いに遇うことが多い。 (略) 西王母(仙女の名)と自称する者は鹿である。辰の日に雨師(雨の神)と自称する者は龍である。河伯(河の神)と自称する者は魚である。 (略) 未の日に主人と自称する者は羊である。 (略) 子の日に社君と自称する者は鼠である。神人と自称する者は蝙蝠である。丑の日に書生と自称する者は牛である。これらの物の名を知ってさえいれば、悪戯をすることはない。

「抱朴子 内篇」は、4世紀初めの中国で葛洪によって著された仙人マニュアルです。巻十七の「登渉篇」は、修行のために山へ入ろうとする仙人志願者のための心得ですが、どうも山では、日替わりで妖怪が現れるようです。未の日には羊の怪が。・・・どんな悪戯をするんでしょう。
ちなみに、この葛洪の従祖父葛玄は、あの左慈仙人の弟子にあたります。血筋ですね。

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ひつじグッズよりどり

ひつじグッズ

なんともいえない「おとぼけな羊さん」の顔にくぎづけ・・・インパクト大のこんなユーモアなサンダルなら目立っちゃうこと間違いなし!^^

ビルケンシュトック “シープレッド”
どこかで見たサンダルですが、大人用もあるようです。あいかわらずヘンなひつじですが……。

ビルケンシュトック “シープレッド”


指輪からネックレスまでかけられるアクセサリーツリー。ヒツジはピアスフォルダーに。
●天然木・スチール●約14×10×23cm

アクセサリーツリー ヒツジ ひつじの背中に穴があいてるみたいです。(ピアス用)

アクセサリーツリー ヒツジ


ふわっとウールをまとったリアルな羊に一目ぼれ!
ウィットに富んだネックレスです。
キュートなチャームもチェーンも全てスターリングシルバー。
コーディネートしやすいのでぜひトライしてみてください。

サファリネックレス羊チェーン 漢字ネックレスに対抗してぬいぐるみネックレス? なんか東急ハンズ行けば作れそう。……銀は無理か。

サファリネックレス羊チェーン


これからの季節でもガンガン履けちゃう遊び心満載のサンダルがNEWフェイスにて入荷いたしました!

ビルケンシュトック “シープレッド” 違うバージョン(大人用)。どっかのティーンエージャーみたいな顔してます。

ビルケンシュトック “シープレッド”

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羊飼いの天候俚諺

ひつじ話

朝から虹がかかるとやがて雨となり、夕方虹がかかると翌日は晴れる。天候俚諺はあくまで大まかな目安で、100パーセント当たるわけではないが、科学的にもある程度根拠のあるものが多い。この場合、朝虹は西方で雨が降っていて東方が晴れていることが多く、夕虹は西方が晴れていて東方が雨のことが多い。天気は地球の自転の関係で西から東へ変わるのが普通だから、朝虹の後は雨になり、夕虹の後は晴れることが多いことになる。
類例が各地に見られ、美しい虹にふさわしく、ことわざも次のように韻をそろえたものが多い。
「朝の虹は羊飼いの憂い、夕方の虹は羊飼いの喜び」
(英、  A rainbow in the morning, is shepherd’s warning, a rainbow at night, is the shepherd’s delight.)

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ヤコポ・バッサーノ 「ノアの箱船に乗り込む動物たち」

ひつじ話

バッサーノ「ノアの箱船に乗り込む動物たち」  「ノアの箱船に乗り込む動物たち(部分)」
ノアは子らと、妻と、子らの妻たちと共に洪水を避けて箱船にはいった。また清い獣と、清くない獣と、鳥と、地に這うすべてのものとの、雄と雌とが、二つずつノアのもとにきて、神がノアに命じられたように箱船にはいった。こうして七日の後、洪水が地に起った。

 創世記第7章 

以前、「楽園」をご紹介したバッサーノの、「ノアの箱船に乗り込む動物たち」です。現在、大阪市立美術館で開かれている「プラド美術館展」で観られます。以前ご紹介したムリーリョの「貝殻の子供たち」とあわせて、ぜひ。
それはそうと、猫と羊の大きさが同じくらいなのが、ものすごく気になるんですがどうしましょう。どっちも可愛いから良いんですけども。

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「セルボーンの博物誌」

ひつじ話

グレイタム教区の荘園は、「羊を除いては」どの家畜も、適当な季節に、森に追い入れる権利を認められていることを、ロンドン塔からの古い記録によって、私は承知しております。
羊だけが除外されているのは、羊は草をたいへんよくたべる動物ですから、好い牧草をすっかりたべつくして、鹿の蕃殖の妨げになるからだと思われます。

18世紀の中頃、英国ハンプシャー州はセルボーン村の副牧師であったギルバート・ホワイトによる、故郷への愛にあふれた博物学の書です。博物学者トマス・ペナントへの書信を集めた第一部と、同じく博物学者デインズ・バリントンへの第二部にわかれますが、この羊についての一文は、第一部第七信、「密猟と野火」に記されたものです。

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「星  プロヴァンスのある羊飼いの物語り」

ひつじ話

―じゃあ、あなたがた羊飼いは魔法を知っているっていうのはほんとう?
―いいえ、ちっとも。だけどここにいると星に近いんで、平地にいる人よりか星の世界のできごとをよく知っているんですよ。
 お嬢さんは相変わらず上を向いていた。頭を片手で支えて、羊の毛皮にくるまって、可愛い天の牧童のように見えた。

19世紀フランスの作家アルフォンス・ドーデーの短編集「風車小屋だより」から、「星」を。
山の上で羊番をする青年と、食糧を運んできた主家のお嬢さんの、静かな会話です。

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「おとうさんはひつじかい」

ひつじグッズ

「おとうさんはひつじかい」
ぼくのおとうさんは、ひつじかいです。
でも、ただのひつじかいではなくて、ひつじのかったけからセーターまでつくってしまう、すごいひつじかいです。

白根美代子の絵本です。羊飼いのお父さんが、春に刈った羊毛で冬に着るセーターをひとりで編んでしまうまでのお話。
羊飼いなだけでもすごいのにすごいのに。

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ムギとヒツジの考古学

ひつじ春夏秋冬

「ムギとヒツジの考古学」
ムギの値段、ヒツジの値段
 西アジア古代社会の王侯・貴族たちの富の源泉は、どこにあったのだろうか。ムギだったのだろうか、それともヒツジだったのだろうか。
 ヨルダンの田舎町で、ムギとヒツジの値段を調べてみた。品質にもよるが、小麦粉1袋(50kg)とヒツジ1頭が、ほぼ同額である(約5,000?10,000円)。したがって、ヒツジ1頭を買うと、標準的な家族がほぼ1カ月食べる量の小麦粉を失うことになるわけだ。そんなに高いのなら、いっそニワトリで我慢してみてはどうかと思うのだが、そうはいかないらしい。数十万年もの間、ガゼルを食べてきた彼らにとって、今に残る唯一の代用品がヒツジなのである。なるほど、ヒツジの値段が高いわけである。
 ただし、古代社会においてもヒツジがムギよりも高価であったとはかぎらない。そもそも、価格決定のシステム自体が異なっていたからである。しかし、ヒツジの価値がムギにくらべて相対的に高かったことは、各種の資料からうかがうことができる。たとえばウルク出土の「ワルカの壷」(紀元前3000年頃)では、イナンナ神の下に人間、人間の下に家畜、家畜の下に穀物、穀物の下に水の流れが表されている。これは、天界から大地までの秩序の表現であろう。そのなかで、家畜は穀物の上位に位置づけられている。この壷だけではない。たとえば彩文土器の文様についても、家畜の表現は多いが、穀物の表現はごく希である。また、家畜に似た神はあっても、穀物に似た神は創造されていない。穀物に関しては、地母神や太陽神など、それを育む自然の方が神格化されるのが一般的であった。
ワルカの壷

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死んだ動物を園内に埋める ドイツ村、100頭超

ひつじ事件

 前橋市苗ケ島町の赤城高原牧場「クローネンベルク・ドイツ村」で、平成6年の開園以来、死んだ羊や馬を園内に埋めて処分していたことが14日、関係者の証言で分かった。その数は100頭を超すといい、当時の関係者は「処理費用を浮かせるため社長の指示で始まり、慣例化していた」と証言。(略)
 複数の元幹部によると、開園当初から、死んだ羊は放牧場の中央付近に重機で穴を掘って処分。馬も北西隅の栗園付近に埋めていたという。元幹部の1人は「埋めた羊の数は100頭を超す。動物の処分には社長決裁が必要だった」と話す。(略)
 廃棄物処理法によると、動物の死体は畜産農家の場合は産業廃棄物に区分され、化成工場で肉骨粉にされるのが通例。愛玩動物の場合は、一般廃棄物として処分される。県廃棄物政策課は「ただちに法律違反とはいえないが、倫理的には問題がある。関係者から情報を集めたい」としている。

10年で100頭……くらい死ぬもんなんでしょうか。

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「ホチムの魔王」

ひつじ話

被害者はまるで神かくしにでもあったように、突然姿を消し、二、三日後には野ざらしの死体となって発見されるのが普通だったが、時には警備隊の宿舎の中で犯行が演じられるというほどの不祥事さえも起こったのだ。
ただ、どの場合でも、ふしぎな一致点というのは、死体の首がどこかに持ち去られて発見されず、そのかわりに、羊の首が死体とともに発見されるという奇怪な事実だったのである。
「種々の報告から総合して、この兇行は一人の狂人のしわざとは考えられない。いや、それどころか、厳正な組織を持った秘密結社の犯行ではないかとわれわれはにらんでいる。この仮想団体を「羊の首」と称するが」
赤松大佐は重々しい口調でつづけた。

高木彬光の怪奇小説集「吸血の祭典」からの一編、「ホチムの魔王」です。昭和11年、関東軍の特務機関に配属された若き大尉に命じられた任務とは!? 
こちらの情報は、カーター卿さんからいただきました。ありがとうございますー。

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