タタールの羊、別名をバロメッツ、リコポディウム・バロメッツ、シナ・バロメッツともいう植物は、黄金の毛に覆われた羊の形をしている。それは四、五本の根茎で立っている。サー・トマス・ブラウンは「伝染性謬見」(一六四六)のなかで、それについてこう記している。
おおいに不思議とされているバロメッツ、タタールの羊なるあの奇妙な半草半獣ないし植物は、オオカミが好んで食とし、羊の恰好をしており、折ると血のごとき汁を出し、まわりの草木が食いつくされるまで生きつづける。
ほかの怪獣はさまざまな種類の動物を結合させてできあがる。バロメッツは動物界と植物界の融合なのだ。
ホイヘ・ルイス・ボルヘスの「幻獣辞典」から、バロメッツの項を。どうも植物羊には2タイプがあるようなのですが、ボルヘスの語るバロメッツは、以前ご紹介したこちらの、ふたつめのほうになるでしょうか。ちなみに、ひとつめの「莢から生まれる子羊」は、マンデヴィルの「東方旅行記」のもの。