樹木と鳥獣を組み合わせるモティーフは西アジアに古くからあり、ことにササン朝の銀器や織物、ストゥッコの建築装飾などに愛用されていた。それらは少なくとも古代イランでは天空信仰にもとづく聖樹や聖獣と考えられていた。
野生の羊ムフロンはしばしばその角の形から月のシンボル、樹木は天空の海にはえ、生命の水を与える聖樹を意味していた。エジプトのアンティノエで発見された羊文錦は、連珠文の首飾りをつけ、リボンをひらめかして歩くムフロンの姿を織りだしているが、角を左右に雄々しく巻きこみ、耳をうしろにそろえて、堂々とした体躯に威厳させ感じさせる姿態は、正倉院の羊木屏風のものと瓜二つである。
ただ正倉院の羊はリボンがない。だが染めのくずれではっきりしないが、連珠文の首飾りをかすかに認めることができ、それだけでもこの意匠がササン美術の反映を立証しているといってよい。
「日本の美術〈6〉シルクロードと正倉院」に、6?7世紀(ササン朝)の羊文の錦が、正倉院宝物の「羊木臈纈屏風」との関連で載せられています。
ムフロンについては、ちゃんとご紹介したことがありませんでしたね。これとかこれとかくらい。
動物画像サイト「ZOO 21st ?21世紀の動物園?」さまでイイ顔のムフロン写真をお見かけしましたので、そちらをぜひ。