羊文の錦

ひつじ話

羊文錦
樹木と鳥獣を組み合わせるモティーフは西アジアに古くからあり、ことにササン朝の銀器や織物、ストゥッコの建築装飾などに愛用されていた。それらは少なくとも古代イランでは天空信仰にもとづく聖樹や聖獣と考えられていた。
野生の羊ムフロンはしばしばその角の形から月のシンボル、樹木は天空の海にはえ、生命の水を与える聖樹を意味していた。エジプトのアンティノエで発見された羊文錦は、連珠文の首飾りをつけ、リボンをひらめかして歩くムフロンの姿を織りだしているが、角を左右に雄々しく巻きこみ、耳をうしろにそろえて、堂々とした体躯に威厳させ感じさせる姿態は、正倉院の羊木屏風のものと瓜二つである。
ただ正倉院の羊はリボンがない。だが染めのくずれではっきりしないが、連珠文の首飾りをかすかに認めることができ、それだけでもこの意匠がササン美術の反映を立証しているといってよい。

「日本の美術〈6〉シルクロードと正倉院」に、6?7世紀(ササン朝)の羊文の錦が、正倉院宝物の「羊木臈纈屏風」との関連で載せられています。
ムフロンについては、ちゃんとご紹介したことがありませんでしたね。これとかこれとかくらい。
動物画像サイト「ZOO 21st ?21世紀の動物園?」さまでイイ顔のムフロン写真をお見かけしましたので、そちらをぜひ。
ZOO 21st ?21世紀の動物園?

記事を読む   羊文の錦

揺銭樹

ひつじ話

揺銭樹
後漢時代(1?3世紀初)の四川省の墳墓からしばしば出土します。青銅の樹木には円形の銅銭が実り、幹を揺らせば、銭が雨のように降ってくる、労せずして莫大な財が手に入る「金のなる木」なのです。漢代の人々は、あの世でもお金に困らないようにと、この「夢の装置」を死者への餞にしました。
(略)
揺銭樹には、こうした羊が樹幹を支える形式のものが少なくありません。金のなる木と羊の間には、どのようなつながりがあるのでしょうか。
(略)
揺銭樹の形を見てください。横棒が一本多いですが、全体として「羊」の字形に似ていませんか。揺銭樹の枝は自然の樹木と違い、真横に張り出す形が普通で、結果として樹上の鳳凰と合わせて「羊」の字形に似るのです。羊の上に「羊」字形の樹木をたてることにより、「羊上加羊」という構図となり、文字を変換して「祥上加祥」(次々と良い事が起こる)という意味が添えられます。

東京国立博物館蔵の揺銭樹です。羊は、字形つながりで「祥」、音では「陽」と通じ、中国ではおめでたい図柄の中で使われることが多いようです。こちらは「祥」のほうですね。
玉瑞獣をご紹介したときにも、少しふれています。

記事を読む   揺銭樹

羊形土器

ひつじ話

羊形土器
前1500?前800年  テヘラン州フルヴィン出土
磨研土器  高……17.3  長……21.0
写実的に表現された頭部に対し、四肢は抽象的に表現される。背部には吊手をもち、胸には液体を注ぎ出すための小孔が穿たれている。
前1千年紀前半の動物形土器には雄性を強調した例が数多くみられるが、本作も大きく反り返った角をもつ、成熟した牡羊が表現されている。

イラン国立博物館所蔵の形象土器です。
「ペルシャ文明展」は、現在、大阪歴史博物館で開催中です。9月17日まで。

記事を読む   羊形土器

小野蘭山 「本草網目啓蒙」

ひつじ話


(略)
唐山ニテハ畜テ食用ニ供ス。本邦京師ニハ畜者ナシ。他州ニハ畜処モアリ。皆漢種ナリ。稀ニ観場二出ス。形馬二比スレバ小サク、狗二比スレバ最大ナリ。多クハ淡褐色ナリ。白色ノ者モアリ。頭ハ略馬二類シテ短シ。喉下ヨリ胸二至テ長毛アリ。喜デ紙ヲ食フ。

江戸後期の本草学小野蘭山が行った、「本草綱目」講義の講義録です。…ちょっとヤギの話をしてる気もしますが。そしてやっぱり紙を

記事を読む   小野蘭山 「本草網目啓蒙」

チャールズ皇太子、夫人の誕生プレゼントに羊=英大衆紙

ひつじ事件

21日付の英大衆紙デーリー・メールはチャールズ皇太子がカミラ夫人に60歳の誕生祝いとして羊2匹をプレゼントしたと報じた。
 皇太子は希少種の雄羊と雌羊それぞれに300ポンド(617ドル)費やしたというが、カミラ夫人は異例のプレゼントを喜んだという。
 同紙によると、カミラ夫人の友人は英王室は既に多くのものを所有しており、特別豪華なプレゼントは贈らないと指摘。王族の贈り物は良く考慮したものが多いが、人によってはちょっと変と思うかもしれないという。

人によっては普通の贈り物なんでしょうか。

記事を読む   チャールズ皇太子 ...

雑宝蔵経 「召使いと羊の闘い」

ひつじ話

 むかし、一人の召使いの女がいた。いつも主人のためにもっぱら麦と豆を炒る仕事をしていた。主人の家には一頭の羊がいて、すきを狙っては麦と豆を盗み食いしたので、量目が減って、主人に叱られてばかりであった。 (略) そのため女はいつも羊を憎み、しょっちゅう杖で引っぱたいていた。そのため羊も腹を立て、角で彼女を突いてくるのであった。 (略)
 ある日、召使いの女が素手で火を扱っていたとき、羊は彼女が杖をもっていないのを見て、女に向かって突きかかってきた。女は、とっさに手にした火を羊の背に押しつけた。羊は熱がって、ところかまわず突き当たったので、火はまき散らされて村人を焼き、山野にまで延焼してしまった。山中には五百匹の猿が住んでいたが、そこにも火は燃えさかり、逃げるひまもなくて、みるみるうちにみな焼死してしまった。
 天人たちはこれを見て、こうを唱えた。
  瞋恚と闘諍のあるところ
  中途にて歯止めは利かず
  羊と婢との闘いに
  村人と猿は死に絶えたり

 「中国古典文学大系(60) 仏教文学集」 

大量の説話が詰まった仏教経典である「雑宝蔵経」の中の一話です。説話によって教義を学ぶことが本来ではあるのですが、お話のインパクトが大きすぎて、なんだかそれどころじゃなくなりそうです。

記事を読む   雑宝蔵経 「召使いと羊の闘い」

ひつじグッズよりどり

ひつじグッズ

コンセントに直接差し込むタイプの、手軽でかわいいミニアロマ
ライト。コードがないので、お部屋の邪魔になりません。
商品サイズ 縦8.5・横8.5・高さ8.5cm

ミニアロマライト *ひつじ* 浮かび上がるひつじ。いい感じです。

ミニアロマライト *ひつじ*


▼このTシャツの特徴は? 
羊さんの大行進。のんびりゆったり今日はどこまで行くのかな。あら、こんなところにオオカミさん?羊さんとお友達になりたいのかな?

ひつじが一匹…全部で何匹?!一匹だけまぎれたオオカミに要注意!思わず眠たくなっちゃうファニーイラストTシャツ◆Sleepy Sheep Tシャツ 普通に着ていれば気付かないかも。でもヒツジ。

ファニーイラストTシャツ◆Sleepy Sheep Tシャツ


モコモコほわほわ、愛らしいヒツジがいっぱいのペーパートランクをご用意しました! 
S,M,Lの3サイズをセットでお届けします。

ヒツジのペーパートランク3個セット/ブルー ピンク色のもあるみたいです。

ヒツジのペーパートランク3個セット/ブルー

記事を読む   ひつじグッズよりどり

「Sora」PVにヒツジ (ナナムジカ×のだめオーケストラ)

ひつじ画像・映像

sora_pv.jpg
Sora ナナムジカ×のだめオーケストラ
2007/7/18 Release WPCL-10416 ¥1,200 (税込み)

  1. Sora  NISSAN 「Cube」 CMソング
  2. キボウの星2
  3. ペガサス

「Cube」のCMに登場していたヒツジが出てくるナナムジカ「Sora」のPVですが、ナナムジカ Official Web Siteにて試聴が可能となっております(こちらでも見られます)。
5分20秒ほどのPVです。上の画像では1分40秒くらいまでしか出しておりませんので、その後の衝撃(?)の展開はご自身の目で是非ご確認下さい。
tomoさま、メールにてご紹介いただきありがとうございました。
Sora ナナムジカ×のだめオーケストラ

記事を読む   「Sora」PVにヒツ ...

明恵 「夢の記」

ひつじ話

 日本における華厳宗中興の祖として有名な高弁(明恵)は、十八歳(1191年)のときから死の二年前、1230年にいたるまで、40年間にわたってみずからの夢を記録しつづけた稀有の人物である。その『夢の記』承久二年(1220)九月二日の項にいう。
 「大きな空に羊の如きものあり。変現きわまりなきなり。或るは光る物の如く、或るは人体の如し。冠を著け貴人の如く、たちまち変じて下賤の人となり、下りて地にあり。その処に義林房あり。これを見てこれを厭い悪む。予の方に向いまさに物言わむとす。予、心に思わく。これは星宿の変現せるなり。予、これを渇仰す(以下略)。」
 (略)
 生息しないヒツジを高弁は視覚化することができただろうか。
 (略)
 全般に古代・中世の日本において、ヒツジ・ヤギの両者とも羊と書かれヒツジとよばれていたようである。『和名類聚抄』(源順、930年ごろ)、『類聚名義抄』(十二世紀)のいずれを見ても、羊はヒツジと訓まれ、ヤギの項はない。『日本書紀』皇極紀、および『本草和名』(深根輔仁、920年ごろ)に山羊が登場するが、その訓はカマシシであり、カモシカを指す。
 ヒツジのみならずヤギもまた、日本においては原産せず、飼育もされなかった。したがって高弁がヤギを直接観察した可能性もきわめて少ない。ところが彼が手にとって見る機会があったと思われる絵画にヤギらしい動物が描かれている。
 『鳥獣人物戯画』乙巻(十二世紀なかば)には(略)、よく知られているとおり高山寺の朱印が捺してある。そして高山寺を創建したのは、ほかならぬ高弁であった。

中村禎里「日本動物民俗誌」の「カモシカ」の章にある、明恵上人が夢に見た「羊の如きもの」についての考察です。上人が見た「羊」のかたちは、おそらく「鳥獣人物戯画」のほぼヤギの姿をした「羊」であろう。さらに、「戯画」のこの動物は、シカやカモシカを参考にして描かれたものだろうというお話なのですが、たしかに、いろいろ混ざってそうです。どちらにせよ、不思議な夢ではありますが。

記事を読む   明恵 「夢の記」

そうだ、ヒツジを飼おう

ひつじ春夏秋冬

とか、思い立つことがあるかどうか分かりませんが、

現在お譲りできる動物たち ヒツジ ミニブタ エミュー

売ってます……。
もともと移動動物園とかされてるところらしいです。
まあ
ヒツジも気になるのですが

エミュー
エミュー
成長後の身長 約1.6m?2.0mになります
成長後の体重 大人になると40kg?60kgになります。
エミュー豆知識 「オーストラリア原産、ダチョウの一種。昆虫・果実・種子などを食べる雑食性です。

こちらのほうがさらに気になります……。
自分より背が高いペットってどうなんでしょう。
前にも書きましたがヒツジは神戸の六甲山牧場でも売ってます。

羊(種類はコリデール)
コリデール売ります。
販売価格 20kgまで2万円
20kgを超えた分は雄500円/kg、雌600円/kgを加算

微妙な書き方ですがたぶん肉ではないと思います。
あと最近は見かけませんが近所のペットショップに以前は売っていたりしましたので(誰が買ったんだろう……)、一応ペット流通に乗ったりしているのかもしれません。
近くにある牧場から余り物が流れてきた可能性も否定できませんが。そもそも子羊じゃなかったですし、サイズ的に。

記事を読む   そうだ、ヒツジを飼おう

ホイジンガ 「中世の秋」

ひつじ話

 かれの聖遺物崇拝熱、巡礼や祭列によせた熱情には、なにか崇高な感情、敬いのあまりの慎みといったようなものは、そのかけらもなかったかのようである。
(略)
 ルイ王の蒐集熱には、その対象がめずらしい動物、たとえば馴鹿、大鹿のたぐいだろうが、貴重な聖遺物だろうが、なんでもかまわないというところがあった。
かれは、フィレンツェ地方の聖者、聖ザノビの指環だとか「神の子羊」なるものなどについて、ロレンツォ・デ・メディチと文通をかわしている。
「神の子羊」というのは、別名「スキティアの子羊」とも呼ばれ、アジア原産のしだの幹を材料に彫られたもので、ふしぎな功徳があるとされていたしろものである。

ヨハン・ホイジンガの「中世の秋」の一章、「信仰生活のさまざま」のなかに、植物羊の伝説と関わりがありそうなエピソードがおさめられています。
聖遺物蒐集に情熱を傾けたルイ11世が、「神の子羊」に関心を持っていたというものですが、ここでのそれはシダの細工物のようです。・・・タカワラビ

記事を読む   ホイジンガ 「中世の秋」

「ひつじぐものむこうに」

ひつじグッズ

「ひつじぐものむこうに」
「あれえ、どこから きたの?」
 わたしは ききました。そこは、
 二かいの まどなんですもの。
「ひつじぐもから おりてきたの。」
 とたんに、わたしの へやは、ぱあっと
あかるく なりました。
「ひつじぐもって、あの、そらの?」
「そ。あの そらの。ぼく、くもひつじなの。」
 こひつじが いいました。

あまんきみこ作、長谷川知子絵の絵本です。泣いている「わたし」の部屋の窓辺にあらわれた、不思議な子羊の背に乗って、飛んでいったさきには・・・?

記事を読む   「ひつじぐものむこうに」

ヘンリー・リー 「スキタイの子羊」

ひつじ話

「スキタイの子羊」挿画
 ワタの木に関する初期の、事実に即したこれらの記述が、植物=動物の合成物、「スキタイの植物羊」という完全なお伽話へと発展していく過程をたどると、それは他の中世の伝説の場合と同様に、次のような二つの主要な理由に帰することができる。
 (1) 多義的な、あるいは比喩的な言葉の解釈の誤り
 (2) 二つの、実際は異なる物体の、外見的な類似
 今まではこの問題との関連があるとは気づかれなかったと思うのだが、先に引用したテオフラストスの節の中で、ワタの木の熟していない朔果の形と外見を描写するのにまことに適切に使われているギリシア語のメロンという言葉が、「果物」とも「リンゴ」とも「羊」とも訳すことができるという事実は興味深い。
またそこに使われている形容詞は、「春の、若い」という意味である。したがってその一節は、植物の羊毛は木になる「春のリンゴ」から取られたとも、木になる「若い羊」(すなわち子羊)から取られたとも、解釈できる。
(略)
 しかし何世紀かの後に、この植物については何の知識も持たない読者たちが、死語となったラテン語を読んだとき、彼らが「木からできる羊毛」の性質について誤った考えを抱いてしまう可能性に、この転換可能な解釈を許す曖昧な一節が、何の寄与もしなかったとは言えないのである。白い羊毛の柔らかい毛は、春に育った幼い子羊に生えているほうが、春にはまだ一部しか形成されず熟していない状態のリンゴのような果実の中に見出されるよりは、ずっと自然なことに思われる。
(略)
 また、このギリシア語の「メロン」という言葉の使用が、後になってこの「植物=子羊」を生む植物の種子がメロンやヒョウタンのそれのようであるという報告を生んだ可能性もある。

こちらの「スキタイの子羊」には、1887年にヘンリー・リーによって著された植物羊に関する考察「タタールの植物子羊―ワタの木の不思議な伝説」が収められています。
リーは、この怪物の正体をワタの木であると結論づけ、ラテン語の誤読説によってそれを説明しています。やや突飛な気もするのですが、訳者によるあとがきでは、「実体やイメージを伴わない「ことば」や「概念」が先行し、それを後から図像化するときに怪物的なものが産まれるのは、よくあることである。」との解説がなされています。

記事を読む   ヘンリー・リー  ...

E.S.ガードナー 「屠所の羊」

ひつじ話

 ブロンドがぼくに言った、「お名前は?」
「ドナルド・ラムです」
「L・a・m・b?」
「いや、L・a・m」とぼくは言った。
 彼女は名前を書きとめると、こんどはぼくの観察にとりかかった。
(略)
「法の盲点をつくトリックを、あんたはまだほかに知っているのかい?」と夫人はたずねた。
「いくらでもありますよ」
「ドナルド、おねがいだから、タバコに火をつけて、わたしの口にくわえさせておくれ」

法廷ミステリの王者E.S.ガードナーの、私立探偵クール女史と助手のラム君シリーズの第一作です。名前も外見もカワイイけれど性格と持ってる能力がまったくかわいくないラム君が、外見も性格もかわいくないクール夫人とコンビを組むまでの一部始終。

記事を読む   E.S.ガードナー 「屠所の羊」

過越しの子羊

ひつじ話

紋章芸術においては、子羊は「過越しの子羊」の姿で現れる。
子羊は右足(しばしば誤って左足)で、やや斜めに傾いた十字架の柄の端を跨いでいる。そこから赤い十字紋様のある銀色の銘句帯が掛けられている。銀色は「過越しの子羊」の定色である。
また多くの場合、子羊は首を後ろに振り向けた姿で描かれる。

「キリストの紋章」でご紹介した子羊のポーズについて、「動物シンボル事典」の「こひつじ」の項をひいてみました。デューラーの版画をご紹介したこともありますね。類例が多そうなので、追々探してこようと思います。

記事を読む   過越しの子羊

PAGE TOP