漢の十一年(前一九六年)、黥布(げいふ)が叛いた。
お上は病気であり、太子に兵をひきいて行かせこれを撃たせようとした。
四人は相談した、「だいたいここへ来たのは、太子さまの地位を保つためだ。太子さまが兵をひきいられると、状況は危い。」そこで建成侯に進言した、
「太子さまが兵をひきいられますと、功を立てても地位が太子以上になるわけではありませんし、功がなく帰還すればそのことから災難を受けることになります。
その上、太子さまがいっしょに行かれます将軍たちは、いずれも以前お上とともに天下を平定した猛将です。
今、太子さまに彼らを指揮させるのは、それこそ羊に狼を指揮させるのと変りありません。
誰も太子さまのために力を尽くすことを承知しないでしょう。
その功のないことはまちがいありません。
漢の高祖に仕えた張良の事績である「史記 留侯世家」より、故事成語「羊をして狼に将たらしむ」の由来となったお話を。
お上(高祖)の意向から、その地位が危ぶまれている太子のために、張良は四人の賢者を補佐とすることを薦めます。危機的状況にあって、賢者たちは、高祖に太子の指揮による出兵を諦めさせることに成功するのですが、その方法が、太子を羊、将軍たちを狼にたとえることでした。目的は達してるんですが、なんかこう。
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