1566年イングランド南東部エセックスのチェルムズフォードで、三人の女性が魔女術の罪で告発され、そのうち一人が絞首刑に処せられた。これがイングランドで初めての魔女裁判であった。
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エリザベス・フランシスの尋問ならびに供述。
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イヴ婆さんから猫のサタンをもらうと、エリザベスはまず初めに、この(サタンという)猫にたいして、金持ちになっていろいろな物が欲しいと願った。
すると猫は願いを叶えてやろうと約束し、何が欲しいのかと尋ねた。
彼女は羊が欲しいと言った(彼女が自白しているように、猫は奇妙でこもった声で話したが、慣れればこのように聞きとれたのである)。
すると、猫はただちに彼女の牧草地に十八頭の白と黒の羊を連れてきた。
羊はしばらくの間いたが、しまいには、彼女にはわけが分からないことに、みないなくなってしまった。
「オデュッセイア」のキルケからセイラム魔女裁判まで、西洋の魔女概念の歴史が通覧できる「魔女の誕生と衰退」より、エリザベス1世治下のイングランドで行われた魔女裁判の記録を。
羊のために悪魔と取引するのはちょっと……。