12世紀装飾写本の「ノアの箱舟」

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「ノアの箱舟」 「ノアの箱舟」(部分)

ウンベルト・エーコ「芸術の蒐集」から、12世紀装飾写本の「ノアの箱舟」を。どうも納得のいかない生き物がまざってる気がしますが、羊は普通に羊のようです。

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時祷書 「羊飼いへのお告げ」

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「羊飼いのお告げ」

時節柄ということで、「羊飼いへのお告げ」を描いた、15世紀スペインの時祷書です。
時祷書は、「ベリー侯の豪華時祷書」「ワーンクリフの時祷書」などで、羊飼いへのお告げを描いたものをご紹介しています。

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「赤い羊は肉を喰う」

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「いいことでもあったのか?」
「まあね」
電話口から、理香子の可愛らしい笑い声が漏れてくる。
「─ねえ、赤い羊って見たことある?」
突然、理香子はそう訊いた。
「赤い羊?」
どういうわけか、偲は背筋がぞくっとした。いるわけがない動物の存在を、さらりと口にした理香子。彼女の中では、その存在に違和感がない証拠だ。
「そうよ。あたし、今日見ちゃった」

五條瑛の小説を。ジャンルとしては、サスペンスでしょうか。冒頭、主人公の女友達が謎めいた言葉を残して失踪する直前の場面です。

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『転身物語』より「カエサルの昇天」

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いたるところで地獄の鳥である梟が、不吉な予兆を告げた。
多くの場所では、象牙の神像が涙をながし、神聖な杜では、哀泣の声やおそろしげな叫びが聞えたといわれる。
いくら犠牲をささげても、よい兆しはあらわれず、その臓腑は、大きな変事が近いことを予示し、なかでも肝臓の先端は、剣のために切りつぶされていた。

先日ご紹介した、エトルリアの肝臓占いについて、もう少し。オウィディウスの「転身物語(変身物語)」より、ユリウス・カエサルの暗殺が描かれる「カエサルの昇天」を。
その大きさによって吉凶を判断するべき部分が切りつぶされていることが、大凶のしるしとなっているようです。

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「羊の木」

ひつじグッズ

「羊の木」一巻表紙
一般市民には何も知らせずに元受刑者の過去を隠し転入させるこのプロジェクトの全容を知るのは市長とその友人月末、大塚の3人のみ。
移住するは、凶悪犯罪を犯した11人の元受刑者。はたして、このプロジェクトの行方は!?

原作山上たつひこ、作画いがらしみきおのマンガ、「羊の木」の一巻を。
苦しい立場にある市長が、綿を見て羊のなる木を想像した古い時代の単純さをうらやむ場面で、タイトルにもなっている植物羊が描かれています。
万人向けとは言いがたい重いお話ですが、よろしければ。

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ラリックのランプ「牡羊」

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ランプ「牡羊」
1931年
マントルピース用ランプ、ニッケルメッキを施した金属製オリジナル台付

 「アール・デコ光の造形 ルネ・ラリック美術館ガラス・コレクション選集」 

ルネ・ラリックのガラスのランプを。

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エトルリアの肝臓占い(続き)

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「ピアツェンツアの肝臓」の名で知られるこのブロンズ製の羊の肝臓は、表面が四十の区画に分かれていて、それぞれが天界の区分に相応し、その主である神の名前が記されている。
卜占師にとって右側が吉兆の部分、左側が凶兆の部分となっていて、突起部から落ちる日の影によって占ったらしい。
(略)
肝臓は左右の葉に分かれ、さらに葉間切痕と呼ばれる裂け目によって多くの肝葉に分かれる。
とくにその一つである尾状葉を「頭」と見て、卜占が行われたのであった。
ローマの卜占官にもなった政治家キケロは、あらゆる角度から丹念に熟慮し、この「頭」が見つからないときは、これ以上悲惨なことが起こることはない、と判断したと伝える。

ローマと長いこと敵対していた民族に対して意外な措置に見えるかもしれないが、征服後ただちに元老院は天変地異に関してローマ国家の必要に応えうる、エトルリアの臓卜師団を組織した。
(略)
キケロ(『占いについて』第一巻九二)とウァレリウス・マクシムス(第一巻一章)は、ローマがトスカーナ全都市の名門一族に対し、青年を臓卜師として養成するよう求めたことを明記している。
(略)
臓卜師の成功は公式宗教の分野だけにとどまらなかった。
私営の臓卜師が続々と登場し、見料をとって大衆に助言を与えた。
後四世紀末のカルタゴで、のちの聖アウグスティヌスは当時まだ学生だったときに臓卜師に助言を求めた(『告白』第四巻二章)。

ピアツェンツァの肝臓肝臓をもつ人物像をご紹介しているエトルリアの肝臓占いについて、概説書からいろいろと。

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「富岡恋山開(とみがおかこいのやまびらき)」

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木戸  エエ、それじゃア、あなたが聞き及びました三十間堀の、玉屋の新兵衛さんでござりますか。
新兵  アイ、わしゃア新兵衛でござるが、こなさんは、この神明や浅草でよく見る顔じゃが、内の金太郎と何を争っていなさるのだ。
木戸  なんと申して、私も見世物師じゃア人に知られた要七と申します者でござりまするが、今日の物日を当て込みに、この間両国で見せておりました、羊と人間と角力をとる見世物を、この神明に持って来まして、一ト儲け致しましょうと、羊を引いて来る途中、この方がおれに貸してくれとおっしゃいますが、肝心のこの羊を取られましては困りますゆえ、ならぬと申しますれば、なんでも貸せと無理ばかりおっしゃいますゆえ、それで争っているのでござりますよ。
(略)
新兵  でもみすみす覚えのないものを。
藤兵  それじゃア何ゆえ判を押したのだ。
新兵  サアそれは、
藤兵  サア、
両人  サアサアサア。
藤兵  コレ、証文が物を言うわえ。
ト片手に持って証文を広げる。お梅、伊三郎こなし。新兵衛思入れ。
このとき、見世物小屋より、以前の羊のさのさ出て来て、藤兵衛の証文をくわえてむしゃむしゃ喰う事。

ひつじnewsがリンクさせていただいている、 「Mary & Wool」のしつじ様から、羊が活躍する歌舞伎の演目があるとお知らせいただきました。なんとそんなものが。ありがとうございます。
作者は初代並木五瓶、「富岡恋山開(二人新兵衛)」。主人公の玉屋新兵衛が、彼を逆恨みする藤兵衛に偽の借用書をつきつけられ、おどされる場面です、が、よりにもよって見世物小屋の羊に助けられています。
この羊、おそらく、以前「見世物研究」をご紹介したときに触れた、あの羊ですね。歌舞伎の中に使われるというのは、よほど流行ったのでしょうか。
にしても、どうしてこう、江戸の羊は必ず紙を食うんでしょう。
ところで!
今回のネタをくださった、「Mary & Wool」様ですが、ブログ「つれづれしつじ」にて、現在、一日一匹ひつじイラストを連載されています。全百匹を予定しておられる由。最初の一匹からご覧になることをおすすめします。おかしみとか幸福感とかが、じわじわと来ますから。

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「もの食う人びと」

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気になったのは、「おまえは臭い」「野蛮な羊殺しめ」と言われ、いじめられたという経験談であった。
「臭い」はトルコ料理を、「野蛮」はクルバン・バイラム(イスラム教の犠牲祭)の際の調理法を指した妄言らしい。
トルコ料理は、ハシュラマ(煮物)、ケバプ(焼き物)、ドルマ(詰め物)類全般にわたり、バジリコ、コショウ、唐辛子、ニンニクなど豊富な香辛料を使う。
クルバン・バイラムでは、頸動脈を切って羊を殺す。ドイツ料理と香りがちがうだけで、別に野蛮ではないことは言わずもがなであるのだが。
(略)
アポのほうは「ドイツ人になろうとしたけど、なれなかった」男だ。
言葉はマスターしたが、食べものがだめだった。羊肉にしても、電気ショックで処理したのはまずく、やはりトルコ式に首を切って、しっかり血抜きしたのがうまいという。

「食」をテーマにしたルポルタージュの金字塔、辺見庸『もの食う人びと』の一章、ベルリンのトルコ人街で取材された「食とネオナチ」を。

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フィレンツェ毛織物業組合の紋章

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フィレンツェ毛織物業組合の紋章
フィレンツェ、14世紀末─15世紀初頭
砂岩 85×85センチ フィレンツェ市所管
この紋章は、フィレンツェの7つの大組合のひとつである毛織物業組合(アルテ・デッラ・ラーナ)のものである。
この組合は、フィレンツェで最も早い時期に組織された組合のひとつで、強大な力をもっていた。
毛織物業は14から16世紀にかけて、町で最も栄えた製造業のひとつに成長した。
15世紀を通じて約3万人もの職人を擁していたこの組合は、作業を正確かつ厳密に組織化することによって、都市と田園地帯を横断するしっかりとしたパイプを築き、市場に高価な製品を数多く送り込んでいた。
(略)
職人技によって見事に仕上げられたこの石板は、さまざまな経緯を経た後、フィレンツェ市が所管する文化財となったが、もともとは毛織物業組合が所有する数多くの建物のひとつで壁面を飾っていたはずである。

 「フィレンツェ─芸術都市の誕生」展カタログ 

フィレンツェの毛織物業組合の紋章が刻まれた石板です。
毛織物業組合に関連したものとしては、辻邦生の小説「春の戴冠」「物語イタリアの歴史」、サケッティの「ルネッサンス巷談集」サン・ジョヴァンニ洗礼堂のコンクールのお話などをしています。

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古代イランの牡羊像の皿

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牡羊像の皿
イランまたはコーカサス地方出土
銀製鍍金 径26.5センチ
牡羊は、ゾロアスター教では戦勝の神ウルスラグナの化身とみなされ、牡羊は人間にとって善なるもの、即ち富、幸運など、いわゆる吉祥(フクルナフ、フウァルナー)を運んでくるものとして珍重され、イラン系民族の間では装飾文として多用された。

 「アレクサンドロス大王と東西文明の交流展」カタログ 

前3?前2世紀のアルサケス朝時代の皿です。ただし、中央の牡羊は、ササン朝になってから付加されたものとのこと。エルミタージュ美術館蔵。

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ブルフィンチ『ギリシア神話と英雄伝説』より、「アドメートスとアルケースティス」

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アポローンの息子アスクレーピオスは父親から医術の業を授けられたので、死んだ人間を生きかえらせることすら出来たのである。
こうしたことに懸念を抱いたハーデースがゼウスを説得して、アスクレーピオスに雷霆を投げてもらった。
ところがアポローンは息子の死に憤慨して、雷霆を造った罪のない名匠に自分の恨みをぶちまけて復讐しようとしたのだった。
(略)
アポローンはこのキュクロープスたちを自分の矢で射殺したのであるが、ゼウスは非常に激怒してアポローンに罰を与えることにし、一年間、人間に仕えるよう命令したのである。
そこで、アポローンはテッサリアのアドメートス王に仕えることになり、アムプリュソス川の新緑におおわれた川岸で王のために羊や牛の群れを放牧して面倒をみていたのである。

トマス・ブルフィンチのギリシア神話から。
イリアス」の冒頭に、

そもそも二人を争わしめたのは、いかなる神であったのか。
これぞレトとゼウスの御子(アポロン)、神はアトレウスの子が祭司クリュセスを辱めたことを憤り、陣中に悪疫を起し、兵士らは次々に斃れていった。
クリュセスは捕われの娘の身柄を引き取るべく、莫大な身の代を携え、手に持つ黄金の笏杖の尖には遠矢の神アポロンの聖なる標、羊の毛を結んで、

という一節がありまして、アポロンの羊の毛ってなんなんだろうとずっと不思議に思ってるのですが、やっぱり、この羊飼い暮らしのことを指しているんでしょうか。

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「犯罪」

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警察は駅に問い合わせをし、伯爵の邸を家宅捜索し、誕生パーティの客全員に事情聴取した。
ザビーネの行方は一向に知れなかった。
監察医が葉巻ケースのなかにあった目玉を調べた。羊の目玉だった。フィリップの衣服に付着していた血も動物のものだった。
フィリップが逮捕されてから数時間後、ひとりの農民がまた家の裏手で羊が殺されているのを発見した。
農民は羊を肩に担いで、雨のなか、野道を歩いて交番までやってきた。
毛皮が水を含んでずっしり重く、血と雨水が農民のジャケットからしたたっていた。

フェルディナント・フォン・シーラッハの、実話をもとにした短編集『犯罪』の一編、「緑」を。
妄想にとりつかれて羊を殺しつづける青年フィリップ。彼の友人であるザビーネが行方不明になったことから、フィリップは殺害容疑を向けられますが……。

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ムービング・アニマル手帳

ひつじグッズ

11月です。
そろそろ来年のスケジュール帳を買おうとお考えのかたも多いかと思われますが、そんな折、SO様から「ひつじが口をもぐもぐしている」手帳があるとお知らせいただきました。ありがとうございます。
もぐもぐしているとは、つまり、

ムービング・アニマル手帳
確度によってがらりと絵が変わる「チェンジング」が2枚の画像を使用しているのに対し、この「ムービング」は8枚以上の画像を使用することで動画のようななめらかな動きと豊かな表現が可能になりました。
マークスダイアリーでは、ペンギン、シロクマ、ヒツジ、ウサギの動物をモチーフにし、愛らしい動きや表情を再現しました。

 online MARK’S 内 

こういうことなのだそうです。動く!? 手帳の表紙でひつじが動く!?
というわけで、買ってしまいました。
P1000294.JPG
タテにした手帳の上方から見てみたり、
上から見た表紙
持ち上げて、下から見上げてみたり。
下から見た表紙
……たしかに、八種類以上の口のかたちが見える、かも。
というわけで、来年のひつじnewsは、口を動かすひつじの手帳とともに過ごすことになりそうです。

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ヘンリー8世のツノ付き兜

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ヘンリー8世のホーンド・ヘルメット
この注目に値する強化兜は、神聖ローマ皇帝マクシミリアンからヘンリー8世へ贈られた。
これは同時に、ハプスブルク家、ヴァロワ家そしてテューダー家がお互いに優越を競ったとき、ヨーロッパにおけるヘンリーの重要性を証明している。

16世紀、ヘンリー8世マクシミリアン1世から贈られたツノ付き兜です。
非常に魅力的な造形ですが、ウィキペディアで鍛冶師コンラート・ゾイゼンホーフェルの項を見るかぎりでは、なにかと含みのある説明が。

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