注目集める「第4の食肉」

 日本の食卓に上る食肉といえば、まず牛、豚、鶏の3種類。これらに続く「第4の食肉」を開発しようと、商社や食肉会社はこれまで様々な品目を候補に市場開拓を目指したが、なかなか消費者に浸透しなかった。しかし最近になって業界関係者の注目を集める食肉が出てきた。羊肉である。
 羊肉が日本市場に浸透しつつある現状を示すデータがある。生産国の対日輸出量だ。羊肉の大半は輸入品だが、主力供給国のニュージーランドやオーストラリアの生産者団体によると、今年前半のラム(子羊肉)の対日輸出量は前年同期比で4―5割も伸びた。
 供給が増えても価格は堅調だ。東京地区のショルダー(肩肉)冷蔵品の卸値は9月前半時点で1キロ600円と、直近の安値だった6月より約50円(6.7%)高い。都内の大手食品スーパーでは「ラムの売り上げが前年比2倍」となったケースもある。
 羊肉の人気が高まった背景として、国内外でBSE(牛海綿状脳症)や鳥インフルエンザの発生が相次いだことが挙げられる。類似の感染症が確認されていない羊肉について、消費者が「安全だ」と注目するようになった。感染症が発生するたび、牛肉や鶏肉の取り扱い縮小に追い込まれたスーパーが、代替品として羊肉の販売に力を入れた面も大きい。
 消費者の健康志向も需要を押し上げた。「羊肉に含まれるカルニチンという物質がダイエットに役立つ」とテレビの情報番組などで取り上げられ、女性を中心に“支持率”が急上昇した。
 食味も向上。かつて羊肉といえばマトン(成羊の肉)が主力で、とりわけ羊毛生産を終えた7―8歳の羊を処分した肉が多く出回った。このことが「羊には独特のにおいがある」(商社)とのイメージを与えたが、最近はラムが主役になり、マトンも若いものが増えた。「羊肉料理を客に出しても、においがないので、『本当に羊肉か』と聞き返されることがある」(都内の外食店)という。
 都内では北海道の郷土料理ジンギスカンの専門店も増えた。7月に目黒区に出店した札幌市の企業経営者は「他の外食店に比べ競合が少ない点が魅力」と語る。
 羊肉は牛や豚に比べ宗教上の制約が少なく、世界で最も多く消費される肉ともいわれる。関係者は「牛モツのような一時のブームには終わらない」(食肉会社)と手応えを感じ始めている。

ひつじ食

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