離乳前の子羊肉「ミルクラム」

  生後約2?3カ月の離乳前の子羊。フランス料理通にとっては常識かもしれないが、ミルクラムのルーツは、ワインで有名な仏ボルドー近くのポイヤックにある。
  〈収穫が終わったブドウ畑に放され、枯れ枝などを食べるのが羊の仕事だった。だが、約200年前、ワインの評判が高まると、畑の主人は子羊に畑を荒らされるのを嫌がるようになり、森に放牧できるようになる春までの間、小屋の中に入れて乳だけで育てるようになった……〉
  ミルクラムの中でもとりわけポイヤック産は、仏政府公認の食材として名高い。料理本などはざっとそう説明する。
肉付きのいい25?30キロの選ばれたオスだけがミルクラムとして出荷される
  出荷がピークを迎える秋、脂ののった冬。それぞれに合った料理方法がある。その最初のステージをミルクラムが飾る。
  旬は短い。河内さんが今年仕入れた2頭分のミルクラムは10日間でなくなった。刺し身にスペアリブ、ロースト。食べたくても、来年の春まで待たなければならない。
  刺し身は柔らかく、ほどよい歯ごたえ。口の中でほんのり甘い。トロのような食感だ。塩こしょうでこんがり焼かれたスペアリブは、ナイフを入れると、淡いピンク色の肉が筋まで柔らかい。香ばしさと肉汁が、口いっぱいに広がる。
(略)
  ミルクラムの出荷農家は道内でも数軒。出回る肉はわずかだ。「年に1度の食材に出会えたという喜びや、この1頭しか使えないという緊張感がある」と楡金さん。
  約450頭の羊がいる釧路支庁白糠町の「茶路めん羊牧場」の武藤浩史さん(45)は、今年生まれた約200頭のうち10頭をミルクラムとして出荷した。これ以上は出せないと言う。「ラムやマトンにする分も取っておかないと」
  道内でミルクラムの存在を知る人はまだ少なく需要が限られるため、数カ月待ってラムで出荷する方が生産性はいいという。「もうけよりこだわりの食材」と武藤さん。
  さて、ミルクラムにありつくには、どうすればいいのだろう。武藤さんは「食べようと思えば、1年前から時期と場所を調べて予約するくらいの努力がいるもしれませんね」と笑った。
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  羊肉   生後1年未満のものがラムで、おおむね2年以上がマトン。道酪農畜産課によると、国内自給率はわずか約1%。道民に人気のジンギスカンのほとんどはニュージーランドや豪州産。道内の羊は約5千5百頭で市場に出回るほどの出荷量はなく、ほとんどが羊農家とレストランや専門業者との直接取引。値段は輸入肉の何倍もするが、安全性や希少価値で勝負する。

ひつじ食

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