「イソップ寓話集」の羊たち
狼と仔羊
仔羊が川で水を飲んでいるのを狼が見つけ、もっともらしい口実を設けて食べてやろうと思った。
そこで川上に立つと、お前は水を濁らせ、俺が飲めなくしている、と仔羊に言いがかりをつけた。
仔羊が、ほんの唇の先で飲んでいるだけだし、それでなくても、川下にいて上流の水を濁すことはできない、と言うと、この口実が空を切った狼は、「しかしお前は、去年俺の親父に悪態をついたぞ」と言った。
一年前はまだ生まれていなかった、と仔羊が言うと、狼の言うには、「お前がどんなに言い訳上手でも、俺としては食べないわけにはいかないのだ」
悪事を働くことが決まっている人の所では正当な弁明も無力である、ということをこの話は説き明かしている。
毛を刈られる羊
下手な刈り方をされる羊が、刈り手に向かって言うには、「毛を刈るのなら、もっと浅く切りなさい。肉が欲しいのなら、ひと思いにばっさり殺って、少しずつ苦しめるのは止めておくれ」
技術の扱いの下手な連中に、この話はぴったりだ。
妙な羊や羊飼いや狼が大勢いるイソップ寓話世界から二話。
以前ご紹介した河鍋暁斎の戯画の元ネタもありましたので、下に。羊ならぬ仔山羊ですが。
屋根の上の仔山羊と狼
仔山羊が屋根の上に登って、通りがかりの狼に悪態をついた。
それに対して狼が言うには、「悪態をついているのはお前ではなく、その場所だ」
時宜を得れば、強者を見下す勇気を与えられる、ということをこの話は説き明かしている。
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