ウルスラグナの動物変身

ゾロアスター教には、変身譚の他に、シャーマニズムとの関連で気をつけて見ていかなければならぬものが、もう一つあります。それは『アヴェスタ』の「ザームヤズド・ヤシュト」に出てくる、クワルナフ(光輪)というものです。クワルナフはある英雄から飛び去って次の英雄に付く、それからまた飛び去るという事をいたします。
(略)
次に羊、これはゾロアスター教の光輪、すなわちクワルナフに関係します。ところで、カウィとは、イラン最古のペーシュダード朝に次ぐ、伝説的な王朝の名ですが、後には帝王の代名詞的意義をもって使用される。そして、カウィのクワルナフは、帝王権そのものを指すようになります。例えば、中世ペルシア語の文献に『アルダシールの行伝』というのがあります。そこで、アルダシールが、パルティアのアルタバノス五世の女を誘惑して逃亡する場面があります。この逃亡者の後を、羊が追いかけて行く。そして羊は追いついて、アルダシールと一緒になる。アルダシールは、アルタバノス五世を破って、ササン朝を開くわけですから、その時に、パルティアにあったクワルナフが、ササン朝のアルダシールに移ったと解釈すべきです。そこで、羊はクワルナフの象徴であるわけです。
何故、羊は王朝と結びつくのでしょうか。これも、エジプト的な背景を考えることが可能です。エジプトの王様の持つ笞や笏は、元来、羊飼いの蠅払いと杖に起源があるとされます。また、雄羊は生殖力が強いので、その象徴として、雄羊の頭をした神があります。ナイル川の神、クヌームです。この神は、国王を捏ね上げて作ったとされ、それを示す浮彫もあります。ギリシア語ではアルサペースと称される、ハリシェフ神も、やはり羊頭で表されます。このアルサペースは、ギリシア人により、ヘラクレスと同一視されました。ヘラクレスとウルスラグナの関係を考えれば、この神も無視できません。

ウルスラグナは、古代イランで崇拝され、ヘラクレスとも同一視された、ゾロアスター教の戦勝神です。この神様は、牛や馬、ラクダ、雄羊といった動物に変身するのですが、上はそのうち、なぜ羊なんかに化けるのかについての、解説の抜粋です。・・・ええと、ということは、ササン朝は、羊が憑いて成立した、ということで良いんでしょうか。

ひつじ話

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