道産ラム肉全国区に 最高級、人気急上昇 繁殖技術や販路確立へ

道内外で好評な「にいやまふぁーむ」のサフォーク種
 道内の産学官が連携し、道産サフォーク種のラム肉を高級食材として全国に売り込むプロジェクトに取り組んでいる。近年、道内外の一流料理店やホテルがこぞって道産ラム肉を使い始めたが、供給が追いつかないのが実情。そこで、二○一○年をめどに繁殖技術や販路などを確立し、全国区となりながら輸入肉に頼っているジンギスカン料理とはひと味違った、高級路線の「北海道ブランド」に育てる狙いだ。
 世界的にサフォーク種のラム肉は牛肉に勝る高級食材。道内でも、士別や焼尻島産などは最高級と評されるが、出荷量は限られ、一流料理店はフランス産などを取り寄せているのが現状だ。
 道経済部も「道産ラム肉は北海道を代表する逸品になりうる」と注目していた。そこに、滝川市の羊農場「にいやまふぁーむ」(新山敏夫代表)から経営相談を持ち掛けられ、昨年夏からブランド化の動きが本格化した。
 建設業を営む新山代表は○四年から、経営多角化のためサフォークの飼育を始め、現在、約百五十匹を育てている。
 新山代表は「ストレスを与えないことが大事」と考え、羊小屋にクラシック音楽を流し、わらの下に薫炭を敷いた清潔な環境を整えた。また、数種類の酢を混ぜた飲料水を与えるなど試行錯誤を重ねた結果、肉質が柔らかく特有の臭みがないラム肉の生産に成功。評判は口コミで広がり、道内外から注文が殺到、現在一キロ三千円で取引されている。
 一方で、課題も浮き彫りに。繁殖用の親羊の入手が難しく自然繁殖に頼るため、昨年の出荷は六十匹だけ。注文をさばけず、本来は生後八カ月で出荷するのを四カ月に前倒しするなど、採算が取れない状況だ。新山代表は「育て方が分かっても、売り方などその先のことは分からない。このままでは事業が成り立たない」との危機感を持っていた。
 現在、道は道内企業が出資する北海道科学技術総合振興センター(ノーステック財団)とともに、ラム肉の需要動向や流通経路などの調査を行っている。北洋銀行も独自の中小企業支援の基金を通じ、資金面で協力する。また、帯広畜産大や道立畜産試験場(十勝管内新得町)などに、成功率が低い羊の人工授精や効率的な自然繁殖の研究を要請しており、増殖技術の確立も目指す。
 道内の羊農家は約二百戸、飼育匹数は約六千匹。一九六○年代の全盛期と比較すると農家数は0・2%、匹数は2%に激減。牛や豚に比べ繁殖や飼育が難しく、オーストラリア産などの安価なラム肉が大量に流通しているためだ。
 道商業経済交流課は「事業として成り立つめどがつけば、他の生産者も応用でき、全道規模でサフォーク種ラム肉の安定供給の道が開ける」としている。


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