村上春樹 「彼女の町と、彼女の緬羊」

 僕は枕もとのスウィッチを押してテレビを消し、ビールの残りを飲む。そして彼女の町を訪れることを考えてみる。彼女は僕のために何かをしてくれるかもしれない。しかし結局のところ、僕は彼女の町を訪れはしないだろう。僕は既に、あまりに多くのものを捨ててしまったのだ。
 外では雪が降りつづいている。そして百頭の緬羊は闇の中でじっと目を閉じている。

村上春樹で羊と言えば、「羊をめぐる冒険」羊男ですが、こちらは羊男とは無関係な羊話。旅先のホテルのテレビで、百頭の緬羊を飼う小さな町を紹介する広報課の女の子に見入る主人公。

ひつじ話

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