「アローハンと羊―モンゴルの雲の物語」
晴れ着を着た 花嫁のアローハンは、むかえの人たちに つれられて、夫の家へと 旅立ちました。
ホンゴルも、赤いひもを むすんでもらって、花嫁の行列に くわわりました。
アローハンが さびしがらないようにと、父さんが、ホンゴルと その子羊たちを 贈ってくれたのです。
興安作、蓮見治雄文・解説の絵本です。モンゴルの一人の女性と彼女の愛した羊のお話。解説が非常に興味深かったので、そちらも。
モンゴルの人々は、特に深いきずなで結ばれた、殺して食べてしまうことなど絶対にできない家畜がいる場合、その家畜に種々の印をつけて、「神様や仏様にお供えする」という名目で殺さない方法を考えました。アローハンがホンゴルの首につけた「ひも」の印は、じつはそのようなものでした。モンゴルの言葉では、それを「セテル」といいます。
聖別する、ということですね。小長谷有紀の「モンゴル草原の生活世界」に、詳細がありました。
家畜の群れのなかには、しばしば聖別化された個体がいて、これが殺しを回避される。売却されることもなく、ときには毛を刈られることさえないままに、まったく自然に放置される。そのため、結果としてしばしばひときわ大きく、毛並みもひときわふさふさしている。聖別されたことの証として、色とりどりの布製首飾りがつけられていることもある。
こうした個体は、モンゴルでは「オンゴン」とか「セテルテイ」と呼ばれている。オンゴンとは、祖先の魂などを意味することばであり、セテルテイとは聖別のための首飾りがついていることを指している。
……あ。ひょっとしてこれは、以前、わからないままほったらかしにしてしまった、あのチベットの羊の謎の答えなんでしょうか。
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