ブラジルの説話 「羊がおとなしい理由」
蟇蛙を乗せ轡をつけた子羊は、いよいよお姫様の館へ乗り込んで行きます。美しいお姫様は、窓のそばにより添い、綺麗な手を差し伸べて、可愛らしい眼を嬉しそうに輝かしていました。
いままで悄(しお)れ返ったようにしていた蟇蛙は、口の手綱をぐいと引き締め、両脚でしかと子羊の脇腹を締めつけて、手にしていた棒を羊の頭にかざしていました。
(略)
「おや、子羊は気が狂ったか。可哀想に轡までつけられて、乗馬になっているぞ。はははは。ほほほほ」
どの窓からも、人々の笑声がどっと響いて来ます。
子羊は、眼を小さくして、なにもいわないで、ただおとなしく自分の家へ帰って行きました。
こういうことがあって以来、人々は今日でも「従順(おとなしい)」ということを口にすれば、きっと、
「羊のようにおとなしく」
というようになりました。
ブラジルの神話伝説集から、「羊がおとなしい理由」です。
天にも昇りそうなほど陽気な子羊を苦々しく思っていた蟇蛙は、子羊をへこませるために一計を案じ、仮病を使ってその背中に乗せてもらいます。さて、目的地の館が近づくと……?
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