ロマン・ロラン 「ミレー」
この時期に彼は最も美しい作品を制作したのだった。
1856年から57年にかけて『夜の欄の中の羊飼い』と『日没に羊を連れ帰る羊飼い』と『立って杖に寄りかかる牛飼い』との連作を描いた。
彼は物思いに沈む農夫や牧人などという、田舎の人物の中でも神秘的な姿や、一日の終りにあたって、草地の靄や羊の群れから発する温い蒸気が空中にただよう夜、冷たい月光を浴びて深く眠っている大きな牧場や広い野などの詩的な静寂さに、心を引かれていたのであった。
このように彼が「牧人」を好んで描いた結果、それまで彼が人物のために犠牲にしていた風景に、おのずから作品の中で大きな位置を占めさせるようになった。
ロマン・ロランによるジャン=フランソワ・ミレーの伝記から。
「この時期」というのは、あまりの貧困と薄倖に自殺さえ考えたという、ミレーの最も苦しい時期を指すのですが、そうした中で描かれた一枚として、以前ご紹介した「夕暮れに羊を連れ帰る羊飼い」があるようです。
なお、ミレーの「牧人」に対する興味については、アルフレッド・サンスィエの「ミレーの生涯」をご紹介したときにお話したことがあります。
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