「きつね物語」

「きつね物語」
王様はすぐに雄羊のベリンを呼びにやり、ベリンが来ると言いました。
「ベリン殿、レナルドがな、巡礼に出かけるによって、彼のためにミサを行い、それから巡礼袋と杖を授けてはくれんか。」
雄羊が答えて言うに「我が君、私にはそんな大それたことはできません。彼は法王から破門を受けていると自ら明したばかりではありませんか。」
(略)
王様は重臣たちと宮殿にいた。王様は驚いた。何と、熊の皮で造った巡礼袋をベリンが持ち帰ったではないか。
王様が「どうした、ベリン。そちはいずくから参った。狐はどこにおる。奴の頭陀袋を持っているとはどういうわけか。」
ベリンが「我が君、知る限りのことを申し上げます。私はレナルドの家までついて行きました。旅立ちの用意ができると、彼は二通の手紙を陛下に届けてはくれぬかと頼みました。陛下のおためなら喜んで五通でも届けましょうと私が申しましたら、この巡礼袋を持ってきました。」
(略)
豹のフィラペルはそれから牢獄へ行き、まず両人を解き放ってからこう言いました。
「(略) ですから、あなた方は申し分のない約束と補償をいただけます。
陛下は、将来に渡って御両所に雄羊ベリンとその一族のものを差し与え、野原、森林構わず見つけ次第、噛むも食らうも勝手放題、何のお咎めも無しとされました。(略)」
(略)
狼の一族は王様から授かったこの特権を守り、今日に至るまで、見つけ次第ベリンの一族を遠慮なく食べております。

中世ヨーロッパに流布した動物物語である、悪知恵に長けた狐を主人公とする「狐物語」の、15世紀の英訳版から。
ライオンを王とする動物たちの宮廷で、司祭の雄羊ベリンは悪狐レナルドに恨まれて陥れられます。
やはりレナルドのために牢獄に入れられていた狼と熊に食われる羽目になってしまうのですが、どうやら今でも、その特権は有効のようです。あんまりな。

ひつじ話

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