マイケル・ムアコック 「雄羊と樫」
やおらアマージンの足もとから〈銀の雄羊〉を取り上げた女神は、言った。
「この〈雄羊〉にこの男の魂を授けなければならぬ……と予言は告げておる。いま、そのアマージンとやらの魂は肉体を離れ、〈雄羊〉に移りはじめておるのじゃ。アマージンとやらは死なねばならぬ」
「いやです!」二十人ほどの人間がいっせいに叫んだ。
「しかし、待つがよい」と、〈樫の女神〉は微笑を浮かべて、たしなめるように言い、〈雄羊〉をアマージンの頭にのせるや、朗々と唱えた―
母なる海へ走りゆく魂よ、
のぼる月を見て鳴く仔羊よ、
魂は足をとめ、仔羊は鳴くのをやめよ。
そなたらの故郷はまさにここなり!
とたんに新しい羊の鳴き声が聞こえはじめた。
マイケル・ムアコックのファンタジー小説「コルム」シリーズより、「雄羊と樫」を。
捕らわれて術をかけられ、自らを羊と思いこまされていた王は、英雄コルムによって救い出されます。上は、さらなる紆余曲折を経てついに羊の呪いが解かれる場面。偉大な王であるアマージンは、この時点では羊の皮をかぶってたり、草を食わされたり、メェーとか鳴いたりしています。
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