『転身物語』より「ピュタゴラスの教え」
獣肉で食卓を賑わすことを非難したのも、かれが最初であった。
かれが最初に、学識のふかい言葉で(しかし、人びとはそれを信じようとはしなかったが)つぎのように主張したのである。
「(略)だが、羊たちはどんな罪をおかしたというのか。
おとなしい羊たち、おまえたちは、人間の生活を助けるためにうまれ、乳房には甘い乳をいっぱいにたたえ、おまえたちの毛はわれわれのやわらかな衣服となり、死ぬよりも生きていてこそ役に立つのではないか。
(略)
すべてのものは、たえず変転するが、なにひとつとして消滅するものはないのだ。
生命の息ぶきは、転々とめぐり、甲から乙へ、乙から丙へ移りゆき、つぎつぎに肉体に宿をもとめる。
動物のからだから人間の身体に移ることもあれば、人間の身体から動物のからだに居をかえることもある。」
先日来ひっぱっているトリマルキオンの饗宴と「フィロゲロス」のお話に絡んで、羊肉食問答をもうひとつ。オウィディウスの「転身物語」(「変身物語」)より、輪廻思想に基づいたピュタゴラスの主張です。
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