「走れメロス」
メロスはその夜、一睡もせず十里の路を急ぎに急いで、村へ到着したのは、翌る日の午前、陽は既に高く昇って、村人たちは野に出て仕事をはじめていた。
メロスの十六の妹も、きょうは兄の代わりに羊群の番をしていた。
(略)
花嫁は夢見心地で首肯いた。メロスは、それから花婿の肩をたたいて、
「仕度の無いのはお互いさまさ。私の家にも、宝といっては、妹と羊だけだ。他には、何も無い。全部あげよう。もう一つ、メロスの弟になったことを誇ってくれ」
太宰治の「走れメロス」です。
妹の結婚準備のために都まで来たはずなのに、気がつけば王の暗殺未遂犯として、親友を人質に3日で故郷と都を往復する羽目になる牧人メロス。上の引用は、明日の朝には別れを告げねばならない故郷での、妹たちへの台詞。妹と羊が同列らしいです。
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