ウィリアム・ハドソン 「ラ・プラタの博物学者」

子ヒツジが生れたとき最初に行う衝動的動作は、なんとかして立ちあがろうとすることである。
次の動作はものを吸うことであるが、このとき子ヒツジは、卵から孵りたてのひながすぐ適当な食物をついばむような判別力がない。
というのは、子ヒツジはなにを吸っていいか知らないからだ。
近くにきたものはなんでも見さかいなくくわえてしまう。
それは多くの場合母ヒツジの頸の羊毛の房で、それをくわえていつまでも吸いつづける。
おそらくは、母ヒツジの乳房の分泌液の強烈なにおいが、結局その場所に子ヒツジを惹きつけるのであろうが、何かその種のものがあって子ヒツジを導くのでなければ、多くの場合子ヒツジは乳首を見つけることができず実際に餓死してしまうのだろう。

19世紀の博物学者ウイリアム・ヘンリ・ハドソンによる、自らの生まれ育ったアルゼンチンのパンパを舞台とした動物記「ラ・プラタの博物学者」より、第六章「動物母子の本能」からのエピソードです。

ひつじ話

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