「バラガンサン物語」より「種羊難産」

王さまは部下に種羊を残らずより分けさせると、バラガンサンを呼んで来させて命じた。
「おまえは今からこれらの羊を山へ連れて行って放牧せい。こいつらが仔を生んだら、親子の羊を連れて帰って来い。だがこいつらが仔を生まぬうちは帰って来てはならんぞ」
(略)
「すみません、王さま」
バラガンサンがいかにも心痛の面持ちで答えた。「たった一人で帰って来ました」
「何だと」王さまはバラガンサンが手ぶらで帰って来たと聞くと、内心「今度こそバラガンサンが不運な目に遭う番だ」とほくそ笑んで、声を張り上げて問うた。
「羊群が仔を生まぬのに、下山したからには、罰は承知だな?」
「ハイ、王さま」バラガンサンが答えた。
「あっしの運が悪かったのか、王さまにつきがなかったのか、あっしにもわかりませんが、春になって、王さまがあっしに渡された羊どもが仔を生もうとしましたところ、どいつもこいつも難産で、結局親子ともみんな死んじまいました」

モンゴルの伝説的人物バラガンサンの滑稽譚から。そうか、蘇武もこうすれば良かったのか(無理です)。
トリックスターつながりということで、「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」もご参考にどうぞ。

ひつじ話

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