ロングフェロー 「エヴァンジェリン」

一番先きに鈴を下げて、エヴァンジェリンの綺麗な仔牛は、
雪のやうな白い毛色と、頸輪にひらめくリボンを誇つて、
まるで人間の情を解するもののやうに、静々と歩いて行つた。
次に、鳴く羊の群を連れて、羊の好きな海岸の
牧場から羊飼ひが帰つて来た。其後ろには番犬が、
根気好く、重々しく、又自分の直覚をさも得意気に、
堂々と、落着いて、羊の群の端から端へと、歩いたり、
房々した尾を振つたりして、落伍の羊を駆り立てて居た。
羊飼ひの眠むる時、番犬は代つて羊の支配者であつた。夜霧が降つて、
星の照らす静けさを、狼が吠える時、彼は羊の保護者であつた。

19世紀アメリカの詩人ヘンリー・ワーズワース・ロングフェローの「エヴァンジェリン」から。
18世紀半ばのアカディーを舞台にした、戦争のために引き裂かれた恋人たちの放浪と再会の物語。引用はその冒頭部、いまだ平穏を保つ幸福な村に暮らすヒロインの姿が描かれます。

ひつじ話

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