牧畜民と農耕民との対立
旧約聖書にカインとアベルの物語がある。
(略)この二人の兄弟の争いは、カインによって象徴される農民と、アベルによって象徴される遊牧民との対立を表すものといえる。
(略)
農民は土地で生活しているわけだから、土地に対する所有意識がきわめて鋭敏である。
(略)しかしその点牧畜民は鈍感であって、自分の家畜の大群を引きつれて、平気で農民の所有地を横ぎるようなことをしたのである。
遊牧民の飼養する動物の代表を羊とすれば、定着農民の飼養する動物の代表は豚だといえる。
(略)遊牧民と定着民のあいだにはぬきがたい対立感、憎悪感が存在する。
したがってそこから一方が他方のシンボルを嫌悪し軽蔑するという結果が生れる。
そしてユダヤ教徒、イスラム教徒が豚を不浄視して食べないのは実は彼らがもともと遊牧民だったからだといえるのである。
動物イメージを手がかりに西欧思想を解説する「思想としての動物と植物」から。
カインとアベルについては、「アベルの死の哀悼」やヘント祭壇画(部分)をご参考にどうぞ。
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