ファブリオー 「エテュラ」
司祭は答えてこう言った。
「こんな時刻に来いなどと
おまえは気でも狂ったか
靴も脱いでしまっている。
とても出かけられぬぞ」と。
若者はすぐ言葉を継ぎ
「いや、だいじょうぶ、私が
おぶって差しあげます」と言う。
(略)
キャベツを盗っていた弟は
白い衣をフラフラさせ
近づいて来る司祭を見て
獲物を運ぶ兄と思い
うれしそうに声をかけた。
「何かあった?」「お待ちのものです」
てっきり父の声だなと
思った息子はそう答えた。
「じゃ、そこにすぐ投げ降ろせ。
包丁はとてもよく切れるよ。
鍛冶屋で昨日、研がしたから。
のど首はすぐ切れるだろう」
(略)
キャベツを盗っていた方も
なぜ逃げるのか、誰なのか
白くフラフラしているのが何か
驚きながら杭にまで
来てみれば、それは袈裟だった。
そこに羊を肩にして
小屋から出てきた兄の方が
キャベツを袋一杯に
盗った弟に声を掛けた。
中世ヨーロッパの滑稽譚ファブリオーの紹介本から、「エテュラ」を。
空腹に耐えかねた貧しい兄弟が、闇にまぎれて富家に泥棒に入ります。兄は家畜小屋に忍び込み羊を肩にかついで、弟は包丁を手にキャベツ畑に。そこに司祭をおぶった富家の息子がはちあわせて……?
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