バイロン 「カイン」
アベル 〔カインに手向いながら〕いけません。―不敬な言葉に、不敬な行いを加えないでください。
あの祭壇はあのままにしておいてください。―あれはエホバが
犠牲を受け入れてくださったので、今は彼の永遠のよろこびで
浄められたのです。
カイン 彼のだ!?
彼のよろこびだ!? 燔(や)いた肉の煙る血の匂いに
つつまれた彼の高いよろこびとは
いったい何のことだ―死んだ仔羊をいまなお求めて
鳴きまどう母羊の苦しみを考えてみろ。お前の敬虔な
刃の下の悲しい、何もしらぬ犠牲羊の跳び上るような
痛みを思え。
ジョージ・ゴードン・バイロンの劇詩「カイン」から。
旧約聖書にあるカインのアベル殺しを描いた物語の山場、アベルの供えた仔羊のために兄弟が争う場面です。
カインとアベルのテーマについては、フィリップ・ド・シャンパーニュの「アベルの死の哀悼」や「思想としての動物と植物」などをご参考にどうぞ。
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