ヘント祭壇画(続き)
灌木や針葉樹が繁茂し、さまざまな花が美しく咲く緑野で、神秘の子羊への礼拝が厳粛に行われている。
神の子羊の頭上に精霊の鳩があらわれ、そこから幾条もの金色の光が四方に放射して、輝かしい世界―天のエルサレムを照らし出している。
祭壇に立つ神の子羊の頭部も輝き、その胴からは聖血が聖餐杯に注いでいる。
祭壇の前部にラテン語の銘文があり、「視よ、これぞ世の罪を除く神の子羊」(ヨハネ伝一・29)とある。
(略)
下段の中央パネルは、黙示録の幻想(とりわけ五、七、二一、二二章)にもとづく描写である。
聖霊と子羊が放射する輝かしい光を受けたこの緑野は、まさに「都は日月の照すを要せず、神の栄光これを照し、子羊はその灯火なり」(二一・23)という「新しいエルサレム」の幻影である。
そして祭壇上の神の子羊を囲む聖人、殉教者、長老たちは、世界の四隅から集まって神の栄光を讃える「もろもろの国、族、民、国語」(七・9など)をあらわす。
むろん、渇いた者のための「生命の水の泉」も、黙示録の幻想に由来する。
数年前から、ファン・エイク兄弟によるヘント祭壇画のうち、下部中央パネルの「神秘の子羊」、外部パネル下段の「洗礼者ヨハネ」、内側左上角の「カインとアベル」、「神秘の子羊」の横に立つ聖女アグネスと、羊のいる部分をご紹介してきているのですが、今更ながら、フランドルの祭壇画についての解説書から、その主題についての説明を。
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