中世の風景

阿部
 それは人によってちがうということはありませんか。つまり、定住者からみれば絶対的空間として入会であるということがあるとしても、別の階層の人にとってみると、すべてが野であるというふうに……。
(略)
石井
 それは天皇から特権を得たということが出てくるわけです。特許状を持っているんだということで、文書をふりかざしてくる。
阿部
 ヨーロッパでは、それに当たるのはジプシーのほかは羊飼しかいまのところ見つからないですね。彼らには第一次大戦後まで、国境なんてものがなかったわけです。ドイツからパリまで羊を追って売りに行ってしまう。(略)
樺山
 まったくの中世とはいえないんですけど、たとえば一番はっきり出るのはスペイン王国の場合です。半島の北と南、何百キロを、一年サイクルか三年サイクルというのもありますけど、周回路があるわけですね。もちろん道路を通るとは限らないわけで、畑の中を突っ切って行くとか、羊が踏み荒らして困るということが、かなり早くから出てくる。イベリア半島をぐるっと一周する羊の道というのは、みんな国王の特許なんです。ただここには、期待するほど国王の呪術的な性格があるとはいえないんです。

先日の「ドゥムジ神とエンキムドゥ神」以来、牧畜民と農耕民の対立について考えていたんですが、中世史家四人による討議録「中世の風景」にあった話題が参考になりそうでしたので。無主の地としての山野河海について東西を比較するにあたって、スペインのメスタが例示されています。
とはいえ、移動民ゆえに頼られる場面も無いではないようですよ。

ひつじ話

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