「羊飼いの男」
太陽が沈んだ後の夕映えが辺りを包み込んでいる。
男は小高い丘の上に立っていた。
丘を下った所に羊の群れがいて、犬が羊達を追いたてている。
それだけの絵だった。
(略)
次の瞬間、風が吹いた。
小高い丘に向かって吹きつけてくる風は、草原の匂いがした。
羊達の啼き声が耳に届いた。
阿刀田高選の“寄せられた「体験」”シリーズ『もちろん奇妙にこわい話』、巻頭の一作「羊飼いの男」です。
美術品を前にした主人公が作品世界にさらわれかける、というお話なのですが、入った先にいるのが羊の群れだと思うと怖がれません。
最近のコメント