ジョルジュ・サンド 「ジャンヌ」
マリは、ジャンヌの頑固さを深く悲しみはしたが、それでも感嘆せずにはいられなかった。
そして、心の中でジャンヌ・ダルクと比べていた。
洗練さとはほど遠い田舎の言葉に、羊飼いの杖を棄てて剣を手にする前の〈オルレアンの乙女〉の姿を見、その声を聞いたように思われた。
混じり合った優しさと毅然、天使のような穏やかさと抑えられた情熱がヴォークルールのヒロインの特徴だったにちがいない。
そしてブロッス侯の夢想好きの後裔は、美しき〈羊飼いの娘〉の魂が、力強さと栄光の苦しみにみちた輝きの中で再び姿を見せ変容を遂げるまで、ジャンヌの中に生きつづけ、地味で平和な暮らしのつらい仕事の疲れを癒すために休息していると想像していた。
「フランス田園伝説集」をご紹介したことのある、ジョルジュ・サンドの小説「ジャンヌ」です。
引用は、天使のように清らかで頑なな心と美貌を持つ羊飼いの娘ジャンヌに対して、深い友情で結ばれた令嬢が、彼女への心情を吐露する場面。
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