『子不語』より「糊をなめる子羊〔羊骨怪〕」

杭州人、李元珪(げんけい)は沛県(江蘇省)の韓公の事務所に間借りし、文書のことを扱っていた。
たまたま郷里の親戚のものが杭州に帰ることになり、李は家への便りをこれに託することにした。
家童に命じて糊をつくらせ封をした。
家童は碗の中で糊をこねあげたが、李はそれを使いおわると、残りを机の上においた。
夜、ぴちゃぴちゃと音がする。鼠が来て盗み食いをしているものと思った。
帳を掲げて様子を窺うと、灯のもとに一匹の子羊がいて、その丈二寸ばかりである。
全身白毛で、糊を食い尽くすと去って行った。李は眼がどうかしたのかと訝った。
次の日とくに糊を作って待っていた。夜になると、子羊がまたやって来た。
そこでよくよく注意してどこに去って行くのかを見ていると、窓外の木の下まで行って消えた。
次の日、主人に話して樹下を掘ってみたら、羊の骨が一本出て来た。
骨の穴の中に糊がまだ残っていた。
とり出して焼いたところ、その後は、妖怪は出なくなった。

清朝の詩人袁枚による『子不語』から、「糊をなめる子羊」です。
中国の怪異譚は、これまでに、「唐代伝奇集」「捜神記」などから、それぞれ数話ご紹介しています。

ひつじ話

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