「狂えるオルランド」第十七歌
化け物の住む岩屋の近く、
高く聳えた岩肌のその頂きに、
ほぼ同じ大きさのまた別の岩屋があって、
そこには羊が入れられていた。
その数はとてものことに数え切れぬが、夏にも冬にも、
オルクスは羊を草場に連れて行くとのことだった。
(略)
羊を囲った岩屋に着くと、大きな岩を押しのけて、
羊の群れを外に出し、われらを中に閉じ込めて、
首から吊した笛を吹きつつ、
羊といっしょに草場へと出かけて行った。
(略)
群れといっしょにわれらも外に出ないようにと、
オルクスは岩穴の戸口にその手を差し渡し、
出口でわれらを捕まえて、背中に山羊の皮やら
羊の毛があれば、そのまま通す。
男も女も、粗い毛皮を身に纏い、
かくも異様な手だてを用いて、外に出た。
イタリアルネサンスの叙事詩、「狂えるオルランド」に出てくるエピソードです。
描かれるのは、盲目にして羊飼いでもある化け物オルクスに捕らわれた王妃を救うために、山羊や羊の毛皮をかぶって脱出をはかる王ノランディーノ一行の奮闘。
ホメーロスの「オデュッセイアー」に登場するキュクロープスが下敷きになっているようです。
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