ポセイドンの誕生と雄羊の結婚
ポセイドンの誕生物語では、この神は陸上の二つの動物、羊と馬に結びつけられている。ギリシアや地中海の神々は概して、雄羊の姿であらわれるほうが、馬の姿であらわれるよりも時期的にずっと早い。この二つの動物のうち、馬は北方から入ってきたばかりであった。したがって、ヘルメスもアポロンも以前は同じように雄羊の姿であらわれていた。おそらく、前者ヘルメスは子をつくる神の役で、後者のアポロンは太陽神の役であらわれたものであろう。このような痕跡はギリシアの宗教儀礼に残っているが、詳しい物話は伝えられていない。われわれギリシアで、ほかの神にはみられないほど、馬を聖獣とみなしたポセイドンについて、羊の姿つまり雄羊の姿であらわれる物語が二つ伝えられている。
ある説によると、レアはポセイドンを生んだのち、アルネ(「羊の泉」)という泉のほとりにいた羊の群れのなかに赤子を隠した、と語られている。
(略)
ポセイドンの花嫁については、英雄伝説の形式で語られているが、その名はテオパネといって、「女神としてあらわれる女」とか「神をあらわす女」という意味である。彼女の父ビサルテスはマケドニアを支配していて、ヘリオスとガイアの息子であった。美しいテオパネには多くの求婚者が言い寄ったが、ポセイドンは彼女を奪って、たぷん、島名が「雄羊の島」を意味する島に連れて行った。
とにかくこの物語のさきは、ポセイドンが花嫁を羊に変え、自分も雄羊に変身した、いやそれどころか、彼は島の住民を羊に変えてしまった、ということになっている。このように、他の求婚者たちがあとから迫ってきたときには、二人は身を隠すことができた。こうして、ポセイドンは雄羊の結婚式をあげた。この結婚から、のちにプリクソスをコルキスへ連れて行くことになる。また、アルゴナウテスたちの遠征を惹き起こすことにもなり、あの金毛の雄羊が生まれることになる。
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