ゲーテ 「羊飼いのなげきの歌」
山の高みから
杖にもたれて
ぼくは何度
谷間を見おろしたことだろう
番犬にまかせた
羊のむれのあとから
ひとりぼくは山をおりた
ぼんやりと重たい足どりで
牧場は一面
きれいな花が咲きみだれていた
誰におくるとも知らず
ぼくは花を摘んだ
ぼくは木かげで
しぐれを避けた
むこうの家の戸がしまっている
みんなはかない夢だったのだ
家のうしろの空を
きれいな虹が彩っている
だがあの人はもういない
遠くどこかへ行ってしまった
ひろい世界へ去ってしまった
たぶん海の彼方かもしれぬ
羊たちよ 黙ってゆけ
ぼくは悲しくてならぬのだ
「西東詩集」をご紹介している、ゲーテの詩をもう一篇。「羊飼いのなげきの歌」を。
ゲーテ関連では、他に、エッカーマン「ゲーテとの対話」にあるルーベンス評及びバイロン評についてお話をしています。
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