イタリア民話 「三月と羊飼」
いちばん気むずかしい三月も、いまは終りに近づきつつあって、万事がうまく運ぼうとしていた。
そしてこの月の最後の日になれば、羊飼にはもう恐いものはなかった。
いまや四月は目のまえにあり、時は春だから、羊の群れは助かったのも同然であった。
そこでいままでの哀願の調子をかなぐり棄てて、冷たく笑って自慢をしてしまった。
「(略)ろくでもない三月よ、さっさと向うの国へ去ってくれていいんだぜ!」
このように大胆不敵な口をきく不実な男の声を耳にして、三月は鼻先に蠅にたかられたみたいな気がした。
すっかり腹を立てて、弟の四月の家へ走っていき、頼みこんだ。
おおわが弟の四月よ、
おまえの日数を三つほど貸してくれ
あの羊飼をこらしめてやるために
どうあっても後悔させてやるために。
イタリア民話集から、コルシカ島の民話「三月と羊飼」を。
厳しい冬を乗り切るために、月々の神に祈りを捧げていた羊飼いが、最後に油断して三月の神を怒らせてしまいます。冬は三日間だけ長引き、その間に彼は大切な羊たちを失ってしまう、という教訓譚。
最近のコメント