「ドクター・ヘリオットの動物物語」
「おれがこいつにしてやれることはあまりなさそうだ」とロブは唸るように言った。
「獣医さんにできることはなにかあるかね?」
「そうだね、注射ぐらいはしてやれるが、この羊に必要なのは面倒をみてやる子羊なのさ。あんたも知ってのとおり、こういう状況の雌羊は自分を忙しくさせるものがないと、いつもあきらめてしまう。この雌羊に与えられる余った子羊はいないかね?」
「今はいないな。でもこいつには今すぐ必要なんだよな。明日じゃ遅すぎるんだ」
ちょうどその時、見慣れた生きものがぶらぶらと視界に入ってきた。
栄養を求めて羊から羊へとさまよい歩いているその姿が、歓迎されない子羊のハーバートであることはすぐにわかった。
ジェイムズ・ヘリオットの「ドクター・ヘリオットの動物物語」から、「みなしご羊ハーバート」を。
あばらの浮いたみなしご子羊ハーバートと、死産のために弱り切った雌羊が母子の縁を結ぶまでを描く、心あたたまるお話です。
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