「デデ・コルクトの書」第八話
串が焼けると、バサトは手に取った。
その名も麗しきムハンマドに讃辞を送ると、串をデペギョズの目に当てた―デペギョズの目が潰れた。喚き声をあげ、山や岩が谺するほど叫んだ。
バサトは飛び跳ねた。羊の間に紛れ込み、洞穴に入った。
デペギョズはバサトが洞穴にいると分かったので、洞穴の入り口に陣取り、片足を入り口の端に、もう片足をもう一方の端に置いた。
彼が言うには、「おい、羊の頭(かしら)、牡山羊よ。一頭一頭来て通るがよい」と。
一頭一頭やって来て通った。彼はすべての頭を撫でた。
「一歳羊たちよ、我が幸運よ、額に白い斑のある牡羊よ。来て通るがよい」と言った。
一頭の牡羊がその場から跳ね上がり、伸びをした。すぐさまバサトは牡羊に飛びかかって喉を切るとその皮を剥いだ。
尾と頭は皮につけたままにしておいて、その中に入った。
15世紀ごろにアナトリアで編纂されたと推定される英雄叙事詩「デデ・コルクトの書」から、第八話「バサトがデペギョズを殺した物語を語る」を。英雄が、一つ目にして人食いの怪物を退治するお話ですが、「オデュッセイア」ですよね、これ。
巻末の解説によると、他に「千夜一夜物語」にも類似点を持つお話があるそうなので、いずれ探して参ります。
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