「天路歴程」
さて、この山の巓には羊飼が羊を養つてゐて、その人たちは公道の側に立つてゐた。
巡禮はそれで、その人たちのところへ行き、(疲れた巡禮が道のべの人に話をする時によくするやうに)杖に身を凭せかけて、尋ねた。
これは誰の歡樂山であるか、彼等に養はれてゐる羊は誰のものであるか、と。
羊飼 これらの山はイマヌエルの國で、お二人はその都の見えるところにゐられます。羊も亦その方のものです。これらのもののためにその命を棄てられたのです。
クリスチァン これは天の都へ行く道ですか。
羊飼 ちやうどその道にゐられます。
クリスチァン そこまでの道程はどれほどありますか。
羊飼 本當にそこへ行き着く人人以外の者にはとても達することが出來ません。
17世紀イギリス、ジョン・バニヤンの寓意物語「天路歴程」から。
天の都を目指す主人公が立ち寄る「歡樂山」での一場面です。
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