アリストテレースの「動物誌」
ある動物は、水が変わっても、毛の色が変わる。すなわち、同じ動物がところによって白かったり、黒かったりするからである。また、交尾についても、各地の水が影響を及ぼし、雄ヒツジが、その水を飲んでから交尾すると、黒い子ヒツジを生むというような具合である。たとえば、トラーキアのカルキディケー半島のアッシュリーティス地方の「プシュクロス」(寒川)という川の水がそうである。また、アンタンドリアにも、川が二つあって、一つはヒツジを白くし、一つは黒くする。スカマンドロス川もヒツジを黄色くするらしい。そのために、ホメーロスは「スカマンドロス」の代わりに「クサントス」(黄川)と呼んだのだ、といわれている。
リビュアでは、角のある家畜ははじめから角を持って生まれて来るが、これは、ホメーロスのいったようにヒツジばかりでなく、その他の家畜もそうである。しかし、ポントスのスキュティアとの国境付近では、反対に、角を持たずに生まれて来る。
ヒツジの性格は愚直で低能といわれている。現に、ヒツジは四足類の中で最も劣悪であって、何の当てもなく荒野へ迷い込んで行く。また、しばしば冬に小屋の外へ出て行き、吹雪に襲われても、羊飼いが動かさなければ立ち去ろうとせず、羊飼いたちが雄ヒツジを連れ去れば、後についてくるが、連れ去らなければ、そのまま居残って死ぬ。
アリストテレースの「動物誌」は、人類最古の動物学書です。もちろんヒツジについても多くが語られています。語られているのですが、最も劣悪らしいです。そんなぁ。
ホメーロスやヘーロドトスといった古典が参照されています。ホメーロスについては、前に「オデュッセイアー」のキュクロープスをご紹介してるのですが、上の記事の参照部分についてもいずれ改めてお話ししたいところです。
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