「十二類絵巻」
四番 左 羊
めくりきて、月みる秋に、又なりぬ、これや未の、あゆみなるらむ
右 牛
むら雲の、空さたまらぬ、月をみて、夜半の時雨を、丑とこそ思へ
判云
左の哥、月みる秋をむかへては、まつこれを、もてなすへきに、ひつしのあゆみ、よにいとわしく、きこゆる心ちしておほゆ、右の哥、月をみて、夜半の時雨をかなしむ心、まことにやさし、我もぬれて、ひとりなきてこそ侍しか、右を勝とや申へからむ
「十二類絵巻」は、室町時代に成立した御伽草子のひとつです。十二支の動物たちの歌合にまぜてもらおうとして追い出された狸が、彼らに復讐戦をしかける、というお話で、上はその歌合の場面なのですが、・・・負けてますね、羊。「ひつじのあゆみ」は屠所に引かれる羊の様子を表す言葉ですから、月を愛でるにふさわしくなかったのでしょうけれど、いやでも、そういわれても。
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