昔、妻と一人娘がいるお百姓がいた。
(略)
やがて、頭のいい男に娘を嫁がせた。
この男もお百姓だったが、とてもずる賢かったし、時々人に悪ふざけがしたくなるたちでもあった。(略)
こうして、さらに何回か婿にだまされた。
最後の場合には、婿が羊を二十頭ばかり買ってよそから帰ってきたところへお百姓が来合わせ、たくさんの羊を見て婿に訊いた。「この羊はどこから手に入れたんだい」
婿が「五つの海の龍王がくれたんですよ」と答えると、お百姓は金持ちになるために自分でも欲しくなった。
そこで婿に羊をもらいに自分と一緒に行くよう言いつけた。
二人は海辺へ行った。
今度も婿はもうある計略を練ってあった。
婿はお百姓をかめに入れ、自分は桶に入って、海に乗り出した。
そして自分は桶をたたきながら、お百姓にもかめをたたけと言った。
二人はたたきながらこう唱えた。
「桶、桶、かめ
五つの海の龍王さま
羊をちょっと分けとくれ」
さらに婿が、「お父さん、もう少し強くたたいて」と言うと、この愚か者も力いっぱいたたいたものだから、カキーンと音がしてかめが割れた。
「中国昔話集」から、もうひとつ。
以前ご紹介した、ナスレディン=ホジャやバラガンサンやティル・オイレンシュピーゲルの仲間のように見えますが、さて。