「イリアス」の宴会シーンと、古代ギリシアの焼き串台

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焼き串台
肉の焼き串台 (クレタ出土、ミノア時代)
アキレウスは大きな肉切台を炉の火のあかりのさす辺りに持ち出し、羊と肥えた山羊の背肉と、肥えて脂のよくのった豚の腰肉を置き、アウトメドンにそれを抑えさせて、自分でそれを大切りに切ってゆく。
さらにまた念入りに細かく切り、串に刺す。
神にも見まごうメノイティオスの子が、赤々と火を燃やし、燃え尽きて焔も弱まった頃を見はからい、おきを敷き並べてその上に串を置き、串の両端を串台に支えて、聖なる塩を振りかける。

食を通じて古代ギリシアの文化を語る「食べるギリシア人」より、「イリアス」の英雄たちの肉好きっぷりに関する一章から。
引用は、「イリアス」第九歌の、アガメムノンがアキレウスの陣屋へオデュッセウスらを使者としてさしむけ、アキレウスがそれを歓待する場面。参考写真の焼き串台がかわいらしいです。
これまでにご紹介している「イリアス」関連記事は、こちらで。

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ジャン善王のムートン・ドール貨

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ムートン・ドール

中世フランス、ジャン2世(1350─64)の頃に造られた、「ムートン・ドール(金の羊)」と呼ばれる金貨です。表の面に、過ぎ越しの子羊が。

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「人間救済の鑑」の受胎告知とその予型

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予型論
13世紀中葉の南ドイツ、あるいはオーストリアにおいて、旧約聖書と新約聖書の予型論的関係を図解する聖書が成立した。
予型論(Typology)とは、旧約聖書に登場する人物やそこで起こった出来事を、新約聖書で語られているキリストの行為を予表するものとして解釈する方法であり、それを豊富なイメージを添えて具体的に示したこの聖書は『貧者の聖書』(Biblia pauperum)として名高い。
ただし、この名称自体は、このような類型の聖書に対して後代の学者がつけたものである。
(略)
『貧者の聖書』からほどなくして(1300頃)、別のタイプの図版入りの書物が制作された。
これは『人間救済の鑑』(Speculum humanae salvationis)と呼ばれているもので、『貧者の聖書』と同様に、予型論に基づく書物であるが、ただし、旧約聖書からの予型は三つの場面に増やされており、それぞれの場面には詳しい説明が施されている。
図は1470年頃にオランダで刊行された木版本の一葉である。
『人間救済の鑑』は明らかに『貧者の聖書』の影響下に制作されているが、異なる箇所も見られる。

15世紀オランダ、聖母マリアへの受胎告知と、その予型である三つの場面を描いた木版画を。
左上が「受胎告知」。右上が「燃える柴」、左下が「ギデオンの羊毛」、右下が「リベカとアブラハムの従僕」を描いたもの。燃えつつも燃え尽きない柴や露の降りた羊毛が、聖霊によって身ごもった乙女に相当するようです。

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エル・グレコ 「洗礼者聖ヨハネ」

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「洗礼者聖ヨハネ」

大阪の国立国際美術館で開催中の「エル・グレコ」展が、今月24日で最終日を迎えようとしています。
大阪のあとは、1月から東京都美術館へ巡回する模様。
上の「洗礼者聖ヨハネ」など、エル・グレコをまとめて鑑賞できる貴重な機会です。ぜひぜひ。

大阪展
会期  2012 年10月16日(火)? 12月24日(月・休)
会場  国立国際美術館
開館時間  10:00?17:00(金曜は19:00) 入館は閉館30分前まで
        ※ 国立国際美術館(大阪・中之島)で、開催中の「エル・グレコ展」は、ご好評につき、会期末の3日間、12月22日(土)、23日(日)、24日(月・休)の開館時間を午後7時まで延長いたします(入館は閉館の30分前まで)。
休館日  月曜日(ただし12月24日(月・休)は開館)
東京展
会期  2013年1月19日(土)? 4月7日(日)
会場  東京都美術館 企画展示室
開室時間  9:30?17:30(金曜は20:00) 入室は閉室30分前まで
閉室日  月曜日(ただし2月11日は開室、12日は閉室)

展覧会では、以前ご紹介したことのある、コルプス・クリスティ学院の「羊飼いの礼拝」も展示されていました。眼福です。

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ウジェーヌ・カリエール 「羊飼いと羊の群れ」

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「羊飼いと羊の群れ」

 「田園讃歌 近代絵画に見る自然と人間」展カタログ 

19世紀後半のフランス、ウジェーヌ・カリエールの「羊飼いと羊の群れ」です。褐色を基調とする、静けさに満ちた世界。新潟市美術館蔵。

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トルヴァルセン 「金羊毛をもつイアソン」

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「金羊毛をもつイアソン」
1803?28年 大理石 高さ242センチ コペンハーゲン トルヴァルセン美術館

18世紀末から19世紀、デンマーク出身のベルテル・トルヴァルセンによる「金羊毛をもつイアソン」です。
これまでにご紹介しているイアソンを描いたものは、こちらで。
金羊毛の伝説については、こちらをご参考にぜひ。

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リーメンシュナイダーの洗礼者ヨハネ像

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リーメンシュナイダー
1490年頃、 ハスフルト、聖キリアン・コロナート・トートナン教区教会

15世紀末から16世紀初のドイツ、ティルマン・リーメンシュナイダーによる、洗礼者ヨハネの彫刻です。
これまでにお話している洗礼者ヨハネについては、こちらで。

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林十江 「十二支図」

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「十二支図」

動物画をよくした江戸後期の画家、林十江の「十二支図」から。

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大英図書館蔵 「ド・ライル詩篇」

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「ド・ライル詩篇」  「ド・ライル詩篇」(部分)
『ド・ライル詩篇』 キリストの生涯からの場面
イングランド、14世紀

中世イングランドの写本を。羊飼いへのお告げが描かれた場面があるようです。
この場面を描いたものは、これまでにもご紹介したことがありますので、こちらをご参考にぜひ。

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トロワイヨン 「河辺の道」

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「河辺の道」

 「田園讃歌 近代絵画に見る自然と人間」展カタログ 

バルビゾン派の巨匠、コンスタン・トロワイヨンの「河辺の道」です。千葉県立美術館蔵。
これまでにご紹介しているトロワイヨンは、こちらでぜひ。

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聖ザビエル天主堂

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愛知県犬山市にある、博物館明治村に行って参りました。

明治時代は、我が国が門戸を世界に開いて 欧米の文物と制度を取り入れ、それを同化して近代日本の基盤を築いた時代で、飛鳥・奈良と並んで、我が国の文化史上極めて重要な位置を占めている。
明治建築も従って江戸時代から継承した 優れた木造建築の伝統と蓄積の上に、新たに欧米の様式・技術・材料を取り入れ、石造・煉瓦造の洋風建築を導入し、産業革命の進行に伴って 鉄・セメント・ガラスを用いる 近代建築の素地を築いた。
これらの建築のうち、芸術上、歴史上価値あるものも、震災・戦災などで多く失われ、ことに戦後の産業の 高度成長によって生じた、大小の公私開発事業により、少なからず姿を消していった。
(略)
明治村では解体されていく建造物の中から 価値あるものを選び順次移築復原を行った。

今回観てきたのは、かつて京都河原町に建っていた教会である、「聖ザビエル天主堂」です。
天主堂

公式HP内「聖ザビエル天主堂」

フランシスコ・ザビエルの宣教を記念して建てられたゴシック様式の建築物ですが、こちらの内陣に並ぶ九体の聖像のなかに、洗礼者ヨハネがいるのですよ。
とりあえず、中に。クリスマスシーズンのためか、大きなリースが下がっています。
天主堂内部
奥に進むと、むかって左奥に聖ヨハネが。足もとの子羊でそれとわかります。
洗礼者ヨハネ
ということで、足もとのアップも。
ヨハネ足もと
聖像も見ていて飽きませんが、そのほか、ステンドグラスなどが夢のようにみごとな建物です。お近くならば、ぜひ一度。
なお、洗礼者ヨハネのお話はずいぶんしておりますので、まとめてこちらで。

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「バウドリーノ」

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ピグミーにちがいないと思われる部族を一行は見た。
(略)
獲物は、長い棒に吊るされていたが、彼らはその棒を運ぶのに、両端にふたりずつ、四人がかりだった。
ピグミーのほうが鶴よりも背が低かったので、獲物は地面をこすることになった。
そのため、首のほうが棒にくくりつけられ、土ぼこりのうえには、鶴の足で長い線が引かれていた。
(略)
一行が最後に見たのは、背丈がヌビア兵の頭をはるかに超える巨人族だった。
彼らは巨人であり、また一つ目でもあった。
髪がぼさぼさで服装はだらしなく、ガヴァガイの言うところでは、岩の住居の建設か、あるいは、羊や牛の飼育にたずさわっていたが、この点にかんして巨人族の右に出る者はいなかった。
なぜなら、牡牛の角をつかんで引きずり倒すこともできたし、牡羊が群から離れれば、犬も必要とせず、片手を伸ばして羊の毛をつかみ、元の群に連れ戻したからである。

先日お話した「東方の驚異」関連で、もう少し。
ウンベルト・エーコの小説『バウドリーノ』です。
時は12世紀、稀代のホラ吹きを自称するバウドリーノが、実際に目の当たりにしてきたという驚異の数々を語る、虚実が激しくいりまじる一代記。
引用は、司祭ヨハネの国を目指すバウドリーノと友人たちが、異形の種族が行きかう市にたどり着く、「バウドリーノはプンダペッツィムに到着する」から。以前ご紹介したことのある小人族が、天敵の鶴を持ち込んでいるようです。

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鹽竈神社、飾燈籠

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もう少し、旅ばなしを続けさせていただきます。
さて、松島まで来たからには、鹽竈神社にお参りせねばなりません。
こちらでは、境内にある飾燈籠が、たいへん巨大かつ豪華で目を引きます。
飾燈籠
学生社の神社シリーズを引いてみますと、

文化四年(1807)九代藩主周宗(かねむね)公が、蝦夷地鎮定の凱旋記念に奉納されたもので、銅鉄合製の動物、花鳥をはめこみ、精巧をきわめていかにも文化文政的な時代趣向を反映したものであり、竿の部分に藩儒田辺匡敕が奉献の由来を漢文で刻している。

とのこと。
はめこまれた動物は、下の白澤のような瑞獣然としたものが多かったように思うのですが、
白澤
それらに何食わぬ顔で混じっているこれは、いったいなんなんでしょう。
ひつじ……?
このあたりのなにかと似てるようにも見えるのですが、見当もつきません。
背景にヤシのような植物が描かれているあたり、むしろもっと遠方との関連も想像できそうな気もしますし。
そもそもヒツジじゃないような気もしてきました。
お詳しいかたがおられましたら、ご教示願えると光栄です。

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松島、五大堂蟇股十二支彫刻

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良きもの、とくに遠方の良きものとの出会いはご縁に従うというのは、ひつじnewsの個人的な主義なのですが、
そして宮城県の松島などはその大きなひとつだったのですが、
先般の震災で、いずれ縁があれば行けると思っているうちに失われるものがあるのだという、いまさらな事実と向き合うことになりました。
というわけで、行って参りましたよ、遅ればせながら、宮城まで。
松島絶景
五大堂
松島は、震災の傷跡をそこここに残しながら、なおかつ美しいところでした。
主目的は、五大堂です。というか、十二支の動物を刻んだ、蟇股の彫刻を見たかったのですよ。
なんといっても、上の写真のような立地ですから、どうなっているものかと思ったのですが、
五大堂
だいじょうぶでした。ありがたいことです。ほんとうに。
十二支彫刻のうち、未です。
未
せっかくなので、他の動物も。
巳
卯
ご縁があれば、ぜひ。(……あれ?)

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