ハンス・メムリンクの三連祭壇画

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三連祭壇画 三連祭壇画(部分)

「聖カタリナの神秘の結婚」をご紹介したことのあるハンス・メムリンクの、ウィーン美術史美術館所蔵の三連祭壇画です。左側にいるのは洗礼者ヨハネですね。洗礼者ヨハネのお話はずいぶんしておりますので、まとめてこちらでぜひ。

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略奪美術品としてのヘント祭壇画

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その頃、ゲントの祭壇画やバウツの「最後の晩餐」を含む約2万点の絵画が消失しようとしていた。
戦争開始時にルーヴル美術館やその他の美術館の学芸員によって先導された美術品隠しのいたちごっこの大ゲームに影響されて、ドイツ軍は美術品保護の秘密の貯蔵庫を作った。
ゲントの祭壇画は、これらの中で最も大きかったザルツブルクの南東約75マイルにあるアルト・アウスゼーという小さなオーストリアの町の北方にある岩塩坑に隠されていた。
山中に1マイル以上入ったところにあるアルト・アウスゼーは、1年を通じて気温と湿度が低いために選ばれた。
(略)
1945年の春、連合軍がオーストリアに進攻したとき、地方のドイツ軍はアルト・アウスゼーの坑道に「大理石─落とすな」と書かれた梱包用の8つの箱を人知れず持ち込んだ。
その中には、実際には連合国の手に美術品が落ちることを防ぐために爆発させる予定だった爆弾が入っていた。

何度かお話をしているヘント(またはゲント)の祭壇画に関して。
いくども略奪や盗難の対象となったこの祭壇画の最後の災難は、ナチスドイツの略奪を受け、その敗北にともなっておそらくは処分されかけたことでした。よく無事でと思って見れば、感慨もひとしおです。

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ダン・シモンズ 「エンディミオン」

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とはいえ、〈教える者〉の年代記において、かつて彼女にいちばん近しかった使徒として名を記すには、やはり“羊飼い”の呼称がふさわしいにちがいない。
“羊飼い”ということばは、この年代記にバイブル的な趣きをもたらしてくれるだろう。
この呼び名に異存はない。だが、この物語において、ぼくは羊の群れではなく、かけがえのない大事な大事な一頭の羊だけを守護する羊飼いとして描かれるはずだ。
しかも、ちゃんと見張ることより見失うことの多い羊飼いとして。

以前ご紹介した、ダン・シモンズ「ハイペリオンの没落」の続編です。
タイトルロールであるエンディミオンの名前はジョン・キーツの同名の詩に由来しており、むやみに人生経験豊富な本編の主人公も、遊牧民出身者という一面を持っています。

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中世ヨーロッパの羊のごちそう

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家禽類や肉や魚を切ったり準備したり盛りつけたりすることにかんして、おびただしい決まりとさまざまな専門用語がありました。
(略)
仔鹿や仔山羊や仔羊の腎臓は一番初めに供されるご馳走で、そのときだけ、あばら骨一本を添えます。
(略)
レバーや砂嚢や咽や腸や心臓のような臓物は、それらを取り出した元の動物の中に詰めものとして入れる材料となりました。
豚や羊や魚から取り出された胃には肉や卵やスパイスが詰められて、近代のソーセージをしのばせるようなそれだけで独立した料理になりました。
(略)
また飾り用に工夫したアーモンドは、細かく切って羊の胃袋をとげだらけにして“やまあらし”や“針ねずみ”に似せて作るのに使いました。

『ガウェイン卿と緑の騎士』『カンタベリー物語』などを引きつつ、中世ヨーロッパの宴席を活写する『中世の饗宴』から、羊の出てくる部分を。

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エドワード・ヒックス 「コーネル農場」

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「コーネル農場」 「コーネル農場」(部分)
この作品は、「ペンシルヴェニア州バックス郡ノーサンプトンにあるコーネル農場の小春日和の日の光景。1848年10月12日、農業協会の報酬を得る。69歳のヒックス描く」という表題のついたヒックスの最高傑作の一点である。
(略)
前景の青々とした草と、クエーカー教徒の納屋の赤い屋根は、この素朴派の画家の平板なパターンに整えられた世界に、アクセントを与えている。
繁栄と調和の時を描いたこの作品は、ある意味で、楽観主義の頂点を迎えた、当時のアメリカの繁栄と幸福を象徴しているとも考えられる。

「ノアの箱舟」をご紹介したことのある、エドワード・ヒックスの「コーネル農場」を。

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サンタ・マリア・イン・トラステヴェレ聖堂のモザイク

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栄光のキリストと聖母

ローマはサンタ・マリア・イン・トラステヴェレ聖堂にある、12世紀のアプシス・モザイク、「栄光のキリストと聖母」です。
モザイク画は、ラヴェンナのものなどをご紹介したことがありますので、こちらでぜひ。

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「皇帝マクシミリアン?世とその家族」

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デューラーの肖像画をご紹介したことのある神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世ですが、宮廷画家ベルンハルト・シュトリーゲルによる集団肖像画をあらためて。
左端がマクシミリアン1世、中央が以前ティツィアーノの肖像画をご紹介しているカール5世。ともに胸元に金羊毛騎士団勲章が下がっています。

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「シレジウス瞑想詩集」

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第一章 152 あなた自身が神の仔羊でなければならない。
キリスト者よ、あなた自身が神の仔羊にならねば、神が仔羊であることは何の役にも立たなくなってしまう。
第二章 95 仔羊にしてしかもライオン。
あらゆることを避け、あらゆることに立派に耐えている人は、その本質においては、仔羊であってしかもライオンであるにちがいない。
第三章 9 羊飼いたちに。
よき人々よ、あなたが馬小屋に入って神の子を見たとき、震える舌でいったい何を歌ったのか、神が子供になったのを見たのか、答えてくれ。幼児イエスが羊飼いの歌でもって、わたしからも讃美されますように。
第五章 164 神は仔羊だけを受け入れる。
神はすべての者が神の子になることを望んでいる。だがそれにもかかわらず、神に受け入れられるのは仔羊たちだけだ。

17世紀のキリスト教詩人、アンゲルス・シレジウスの「瞑想詩集」より、羊の出てくるいくつかを。

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アントン・モーブ 「羊の群れの帰還」

ひつじ話

「羊の群れの帰還」
モーブの作品の主題は、この《羊の群れの帰還》のような穏やかな田園的風景が中心で、羊の描き方などは、バルビゾン派の画家トロワイヨンの作風を思わせる。

19世紀オランダ、ハーグ派の風景画家アントン・モーブの「羊の群れの帰還」です。フィラデルフィア美術館所蔵。引用にあるトロワイヨンの絵は、これまでに多数ご紹介していますので、こちらでまとめてぜひ。
モーブは、フィンセント・ファン・ゴッホの遠縁かつ初期の師匠としても知られています。ゴッホは、ミレーの模写である「羊の番をする女」などをご紹介していますので、ご参考にどうぞ。

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ヴァランタン・ド・ブーローニュ 「泉に寄る洗礼者ヨハネ」

ひつじ話

「泉に寄る洗礼者ヨハネ」

「カラヴァッジョ 光と影の巨匠─バロック絵画の先駆者たち」

「エルミニアと羊飼い」をご紹介したことのある、17世紀フランスのカラヴァッジョ追随者、ヴァランタン・ド・ブーローニュの「泉に寄る洗礼者ヨハネ」です。
カラヴァッジョの洗礼者ヨハネは、これまでに、ボルゲーゼ美術館のものと、バーゼル美術館のものカピトリーノ美術館のものその追加記事などをご紹介しています。ご参考にぜひ。

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ヒエロニムス・ボス 「東方三博士の礼拝」(メトロポリタン美術館)

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「東方三博士の礼拝」 「東方三博士の礼拝」(部分)
ボスは何点かの《東方三博士の礼拝》を描いており、おそらくこの主題のもつ異国的性質が彼の怪奇趣味をそそったのであろう。
これは最も初期の作品とされ、人物描写にはまだぎこちない部分が見られるが、風景は後年に描かれたプラド美術館所蔵のより大型の祭壇画《東方三博士の礼拝》中央パネルの背景と類似している。

ヒエロニムス・ボスは、以前プラド美術館の「東方三博士の礼拝」のお話をしたことがあるのですが、こちらはメトロポリタン美術館の別バージョンです。
三博士を描いたものは、この他、ドメニコ・ヴェネツィアーノの「東方三博士の礼拝」をご紹介しています。

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ジョージ・オーウェル 「動物農場」

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スノーボールは、〈七戒〉がけっきょくはひとつの格言、つまり「よつあしいい、ふたつあしだめ」に要約できるのだと宣言しました。
かれが言うには、これは〈動物主義〉の根本原理をふくんでいるのであり、これを徹底して把握していれば、人間の影響を受けずにすむのだそうです。
(略)
ひつじはこの格言をひとたびおぼえてしまうと、たいへん気に入って、原っぱに寝そべるときなど、みんなして「よつあしいい、ふたつあしだめー! よつあしいい、ふたつあしだめー!」ととなえはじめ、何時間もえんえんとこれをつづけて、けっしてあきるということがありませんでした。

ジョージ・オーウェルによる、スターリニズム批判を目的とした動物寓話「動物農場」を。羊たちも出てきますが、スローガンを唱えて騒いでは議事を妨害する集団という、ちょっとあれな役回りです。

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『イソポのハブラス』より、「狼と羊の譬の事」

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ある川ばたにおおかめも羊も水を飲むに、狼(おおかめ)は川かみに居、羊の子は川裾にゐたところで、
かの狼この羊を喰(くら)はばやとおもひ、羊のそばに近づいていふは、
「其方(そち)はなぜに水を濁らいてわが口をば汚(けが)いたぞ」といかつたれば、
羊のいふは、「われは水すそにゐたれば、なぜに川のかみをば濁さうぞ」と。
(略)
その時おおかめ「所詮問答は無?(むやく)ぢや、なんであらうともままよ、ぜひに汝(おのれ)をば、わが夕めしにせうずる」というた。
これをなんぞといふに、道理をそだてぬ惡人にたいしては、善人の道理とそのへりくだりも役にたたず、ただ權柄ばかりを用ようずる儀ぢや。

イソップ寓話のもっとも古い邦訳を。先日ご紹介した『万治絵入本 伊曾保物語』から、さらに少し時期をさかのぼった1593年、九州天草でイエズス会によって作られた『イソポのハブラス』より、『伊曾保物語』と同じく「狼と羊の譬の事」を引いてみました。
これまでのイソップ寓話関連は、こちらで。

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古代オリエントの玉座肘掛け装飾部品(?)

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玉座肘掛け装飾部品(?)
古代オリエントの玉座肘掛け装飾部品(?)
西アジア様式
クラスノダル地方クバン川流域ケレルメス第3号墳
紀元前7世紀
金・琥珀 鍛金 彫金 金粒細工 象嵌 19.2センチ

 「エルミタージュ美術館名品展 ─生きる喜び─」カタログ 

エルミタージュ所蔵のスキタイ美術を。
スキタイの黄金美術は、トヴスタ=モヒーラ古墳の胸飾りなどをご紹介しています。

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