羊飼いの狼除け

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狼をいちばん恐れていた羊飼いと農民は、先祖伝来の敵に対して、防御の姿勢ともいうべきかずかずの迷信的な手段に訴えた。
たとえば、ラングドッグ地方では、はらんだ牝羊と子羊の数を数えることは、狼に家畜をさし示すことになり、実際に狼が食いにやってくると考えていた。
同じ理由から、ソローニュ地方の羊飼いは金曜日には牝羊を数えることを避けた。
また、狼を近づけないために、驚くべき処方箋や目をうたがうような手段に訴えた。
1566年に、『田舎の家』には「先頭の牝羊に野生のニンニクを縛りつけておくと、狼は牝羊の群れに何の害も与えない」と書いてある。
18世紀には、ディドロとダランベールによる『百科全書』は真偽のほどは保証しないという条件つきで、「地方経済にとって、大きな利益となるだろう」という新しい処置を紹介している。
狼の糞を羊に塗るというのである。その臭いを狼はひじょうに嫌うらしい、というわけである。

ヨーロッパの狼の文化史について語る「狼と西洋文明」から、羊飼いの狼除けのまじないのいくつかを。

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古代ギリシアのアストラガルス

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紀元前五世紀のギリシアでは、アストラガルスを使った遊戯法が数種類もあり、一個だけでなく四個を同時に使う遊戯法もあった。
四つの面は不揃いのため各面の出る確率が異なるため、得点も一様でなく「(各面に名付けられた)目の合計がはやく35点に達するのを競う遊び」(G・ロールフス『大ギリシア以前の古代の骨片遊び』)も考案されていた。
ギリシアとローマ時代にはアストラガルスで遊ぶ絵画や彫刻が多数つくられた。
「さいころ」としての需要が高まり広く用いられるようになると、上流階級の人達は高級品や奢侈品としてのアストラガルスを作るようになった。
大英博物館にはギリシア・ローマ時代のコレクションとして、オニックス、山水晶、青銅、瑪瑙、ガラス、鉛で作られたアストラガルスを一カ所に集めた展示がある。

ナックルボーンの勝負を巡って争う二人の少年の像アストラガロスで遊ぶ人たちをご紹介している、羊の距骨を使ったサイコロやお手玉「アストラガルス(アストラガロス)」について、ボードゲームの歴史の概説書から。

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コッホ 「虹のある風景」

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「虹のある風景」 「虹のある風景」(部分)

18世紀末から19世紀初頭のドイツの風景画家、ヨーゼフ・アントン・コッホの「虹のある風景」を。
同時代では、C.D.フリードリヒランブーの「楽園追放後のアダムとエバ」をご紹介しています。

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サトゥルヌスの記念碑

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サトゥルヌスの記念碑
サトゥルヌスに捧げられた四世紀の記念碑。
羊の絵柄は、サトゥルヌスが牧畜と関係があることを示している。

古代ローマの農耕神サトゥルヌスの記念碑です。
サトゥルヌスと言われると、どうしてもゴヤの「我が子を食らうサトゥルヌス」で描かれるような、ゼウス(ユピテル)の兄姉たちを食らう恐ろしい神話を連想してしまうのですが、これに対して、「ユピテルに脅されて、ギリシアからイタリア半島に逃げてきた」というローマの伝承もあるのだそうです。

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スペンサー伯爵家のご先祖様

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ダイアナの祖先は実は羊飼いであった。
1621年、二世アランデル伯爵が初代スペンサー男爵ロバート(1570―1627)を議会でつかまえて、
「私の先祖が王事に奔走していた頃、貴下のご先祖は羊を飼っておられた」と侮辱したことがある。
スペンサー家が特に反論しなかったのは、先祖の職業が明白だったことにもよるのだろうが、実はイギリス貴族の場合、重要なのは富力であって、家柄や血筋ではないのである。
スペンサー家もその点は心得ており、彼らは羊を飼いながら富を蓄えた。

イギリス貴族についての入門書を読んでいたら、故ダイアナ元妃の実家として知られるスペンサー家について、興味深いことが書かれていました。「羊商人」ではなくて、ほんとに「羊飼い」から始まったんでしょうか。なんだか斎藤道三の油売り伝説みたいですが。

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プトレマイオスによるアレクサンドロスのコイン

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アレクサンドロスの銀貨
大王の後継将軍たちは、王家との血縁関係を持っていなかったため、常に自己の権力を正統化する必要に迫られた。
もちろんすべてを決するのは軍事力であり、戦争での勝利こそが権力保持の第一条件である。
しかしそれに劣らず重要だったのが、マケドニア人兵士を自分に服従させるための政治的心理的な宣伝であり、そのさい最も頼りとしたのが大王のイメージである。(略)
中でも目を引くのは、大王に似た生誕神話や奇蹟譚を創作したことと、貨幣に刻まれた図像である。
(略)
プトレマイオスは、前321年にペルディッカスが殺された後、勝利を記念して新しい四ドラクマ銀貨を発行した。
表には、象の頭皮をかぶり羊の角をつけたアレクサンドロス、裏にはゼウスの坐像が彫られ、「アレクサンドロス王の」という刻印がある。

以前、リシマコスの銀貨をご紹介したことのある、アレクサンダー大王の姿が刻まれたコインをもうひとつ。こちらは、プトレマイオスによるものです。
アレクサンダー(アレキサンダー、アレクサンドロス)大王関連では、他に、「アレクサンドロス大王物語」「おしゃべりの樹」「プルターク英雄伝」などをご紹介しています。

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『黄金伝説』より「聖パトリキウス」

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ある男が、隣家の羊を盗んで食べてしまった。
聖パトリキウスは、だれであろうと盗んだ人は罪のつぐないをしなくてはならないと、なんども人びとに説いて聞かせた。
しかし、だれも名のりでなかった。
そこで、パトリキウスは、みんなが教会に集まった席でイエス・キリストのおん力にかけてその羊を呼びだし、それを食べた人間のからだのなかで啼かせることにした。
羊は、盗みをはたらいた男の腹のなかで「メエー」と啼きだした。
こうして、その男は、たいへん恥ずかしい思いをして罪ほろぼしをしなくてはならなかった。

中世ヨーロッパの聖人伝、ヤコブス・デ・ウォラギネの「黄金伝説」より、聖パトリキウス(パトリック)の章を。
「黄金伝説」からは、これまでに聖アグネス聖クレメンスの章をご紹介しています。

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19世紀インドの星図

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インドの星図 インドの星図(部分)

トプカプ宮殿の柄鏡ペルシアの皿絵星曼荼羅クチャの石窟壁画、はたまた司馬江漢の天球図と、ヨーロッパ以外の場所にも黄道十二宮を描いたものは多く見られるのですが、加えてもうひとつ。1840年頃のインドの写本です。

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歌川国芳 「十二支見立職人づくし」

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「十二支見立職人づくし」 「十二支見立職人づくし」(部分)

 「没後150年 歌川国芳展」カタログ 

「道外獣の雨やどり」「道外十二支 かみゆいどこ未」で髪結いや紙屑屋の羊を描いた歌川国芳による、職人すがたのひつじをもうひとつ。こちらでは、髪結いのようですね。
大阪市立美術館で6月5日(日)まで開かれている「没後150年 歌川国芳展」で、現物を観賞できます。大阪展の後は、静岡、東京に巡回の模様。
これまでにご紹介した歌川国芳については、こちらで。

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英一蝶 「涅槃図」

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涅槃図 涅槃図(部分)

森徹山のものをご紹介したことのある、仏涅槃図をもうひとつ。ボストン美術館所蔵の英一蝶による涅槃図です。縦3メートル近い巨幅とのこと。

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サーンチー仏教遺跡の石彫

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第一塔東門裏面 東門裏面(部分)

インドの仏教遺跡であるサーンチー仏教建築物群の写真集から。
第一塔東門の裏面中央部に、ブッダの教えを聞く動物たちの浮彫が見られるのですが、その中にあってひときわ異彩を放つ人面の羊が。前世が人であったことを示すものとのこと。

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スキタイの胸飾り(トヴスタ=モヒーラ古墳出土)

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胸飾り 胸飾り(部分)
1971年に黒海北岸で発掘されたトヴスタ=モヒーラ(トルスタヤ=モギーラ)古墳は、高さが8.6メートル(造営当時は推定で高さ13.5メートル、直径52メートル)で、現存するスキタイの古墳の中では最大級というわけではないが、二つの墓室のうち一つが荒らされていない状態で見つかったため、注目された。
(略)
女性は全身に金製品をちりばめた状態で発見された。
頭には冠、胸には胸飾り、両腕に腕輪、そして衣服は腐ってなくなっていたが、それに縫いつけられていた小さな金製飾板がたくさん発見された。
胸飾りは、文様帯が三列に分けられている。
(略)
内側の文様帯にはスキタイの日常生活が描かれている。
中央に羊の毛皮を引っ張っている二人の半裸の男、次いで馬と牛の親子、女性と子供による搾乳風景、ヤギ、鳥と続く。

エルミタージュ美術館の所蔵品をご紹介したことのある、スキタイの黄金の胸飾りをもうひとつ。ウクライナ歴史宝物博物館蔵です。

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エルスハイマー 「洗礼者聖ヨハネ」

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「洗礼者聖ヨハネ」

「洗礼者ヨハネと天使たちのいる聖家族」をご紹介しているアダム・エルスハイマーの小品、「洗礼者聖ヨハネ」を。
洗礼者ヨハネのお話は、これまでにずいぶんしておりますので、こちらで。

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ミレー 「夕映えの中の羊飼いの女と羊」

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「夕映えの中の羊飼いの女と羊」

ジャン=フランソワ・ミレーの晩年のパステル画、「夕映えの中の羊飼いの女と羊」を。
ミレーは数多くご紹介しています。こちらでぜひ。

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聖アグネスの小像

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聖アグネス
樫材、オリジナルの彩色
36.1×15.1×8?
「アーヘン市立ズエルモント=ルートヴィヒ美術館所蔵 聖なるかたち 後期ゴシックの木彫と板絵」展カタログ

16世紀初頭、メヘレンで制作された聖アグネスの像を。
祈祷のための小厨子に納められて信仰の対象になったものとのこと。

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