「キリンと暮らす クジラと眠る」

ひつじ話

「キリンと暮らす クジラと眠る」表紙
じゃあ、どうすればいいんだい、ヒツジさんは?
牙がありゃあ、かみつくこともできよう。
爪がありゃあ、ひっかくこともできよう。
爆弾を持っていりゃあ、落とすこともできよう。
でも、ありゃあしないんだもの、そんなもの!
あるのはただ、ウール、ウール、ウールだけ。

アクセル・ハッケの‘情緒あふれる博物学’(本文から)、「キリンと暮らす クジラと眠る」の一章、「ヒツジ ウール革命を待ちわびて」を。
いつかもっと科学がすすんで、ヒツジ無しでも羊毛が作れるようになったなら、何千年もにわたる任務から解放されたヒツジたちはどうするだろう? という、幸福な夢想。ミヒャエル・ゾーヴァの挿絵がまた良いのですよ。

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フランソワ・ブーシェ 「バグパイプを吹く羊飼いの少年」

ひつじ話

「バグパイプを吹く羊飼いの少年」
この作品の完成後、この情景はさまざまなものに再現された。
有名な王立のゴブラン織工場では、「ブーシェの子どもたち」として知られている小型のタペストリーのシリーズが制作され、椅子の背や、かぎ煙草入れの蓋の装飾にもこの絵が使われた。

 「ボストン美術館の巨匠たち 愛しきひとびと展」カタログ 

フランソワ・ブーシェです。これまでにご紹介しているブーシェは、こちらで。

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フレデリック・レイトン 「お手玉遊び」

ひつじ話

「お手玉遊び」 「お手玉遊び」(部分)
これは、レイトンが1867年ロイヤル・アカデミーに出品した5点の古典的構図をもった作品の1点で、古代ギリシアの小像にしばしば表現されている主題、すなわち牛や羊の趾骨を用いる古代のお手玉遊びに興ずる五人のギリシアの少女たちが描かれている。

 「ラファエル前派とその時代展」カタログ 

先日ご紹介した「ナックルボーンの勝負を巡って争う二人の少年の像」に続いて、羊の距骨の遊具が描かれたものを。19世紀イギリス、フレデリック・レイトンの「お手玉遊び」です。
同時代のラファエル前派の絵画をこれまでにいくつかご紹介しておりますので、こちらで。

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シャルル=エミール・ジャック 「森の中の羊飼いと羊の群れ」

ひつじ話

「森の中の羊飼いと羊の群れ」

シャルル=エミール・ジャックです。
前回「夕暮れ」をご紹介したおりに、「羊飼いの女と羊の群」が混同するほど似ているとぼやいたものですが、上には上がありました。北海道立帯広美術館蔵。
話は変わりますが。
ディスカバリーチャンネルのシリーズ「突撃!大人の職業体験」にて、明日の夜(3月21日(月) 23:00?00:00 )、「羊飼いの手伝い」が放映される旨、K&T様からお知らせいただきました。ありがとうございます。
で、その、お話によりますと、去勢の場面などがすごいことになってるそうなので、見るときは覚悟が必要かもしれません。

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右玉出土 銅温酒樽

ひつじ話

温酒樽 温酒樽(部分)
山西省右玉(ゆうぎょく)県大川村(だいせんそん)で発見された青銅製の円筒形容器で、酒を温める樽であると言われています。
前漢成帝の河平三(紀元前二六)年の紀年銘文があって、製造の時期が明確であることが貴重です。
酒樽の側面にはさまざまな動物たちが画面に向かって左方向へ漫歩する場面が表現されています。

キトラ古墳壁画の解説書から。十二支像の古代中国におけるイメージを論ずるにあたって、前漢の青銅器が例示されていましたので、ご紹介を。

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ナックルボーンの勝負を巡って争う二人の少年の像

ひつじ話

少年の像 少年の像(部分)
大理石
後1世紀(前2世紀に制作されたオリジナルに基づくヴァリアント)
ローマ出土
高さ70? 幅90? 奥行58?

 「大英博物館 古代ギリシャ展 究極の身体、完全なる美」カタログ 

アストラガロスで遊ぶ人たち(こちらの展覧会では、「ナックルボーンで遊ぶ二人の少女の像」とのタイトルが付いていました)が展示されていると知って、神戸市立博物館で2011年6月12日(日)まで開催されている「大英博物館 古代ギリシャ展」に行って参りました。目的の少女たちももちろん堪能しましたが、もうひとつ、同じ遊びに興じていながらケンカになってしまったとおぼしき少年の像がありましたので、そちらを。いったいどんな理由でこんなことに。女の子たちはこんなになごやかなのに。
こちらの展覧会は、神戸のあと、7月5日(火)から9月25日(日)まで東京の国立西洋美術館に巡回するようです。
ところで、ナックルボーン(またはアストラガロス、羊の距骨)ですが、昔、大阪の国立民族学博物館のミュージアムショップで買ったモンゴルの遊具シャガイが、おそらく同じ物ですので、下に写真を添えておきます。ご参考にぜひ。
シャガイ

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大英博物館所蔵 双羊尊

ひつじ話

双羊尊
双羊尊
高43.2 口径17.0
商時代(紀元前13?11世紀)
二頭の羊が背中合わせになった形の尊。
羊の躰は鱗状の文様で覆われ、足の上部には二本の小さな角をもつ龍が、身をくねらしている。
(略)
二頭の羊から成るこの形は珍しいが、根津美術館に一点類似品が知られている。

 「大英博物館所蔵 日本・中国美術名品展」カタログ 

殷代の酒器です。
古代中国の青銅器は、これまでにもいくつかご紹介しておりますので、こちらでぜひ。
根津美術館の双羊尊は、いつか見に行かなければならないとかねがね思っているのですが。

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カウナケス姿の女性坐像

ひつじ話

女性坐像
前2600年?前2350年頃
マリ(テル・ハリーリー)イシュタール神殿址出土
アラバスター/高さ:34.4? 玉座:14.0×10.2×13.5?
ダマスカス博物館
マリのイシュタール神殿より出土した女性石像であるが、彫刻のほどこされた玉座と思われる椅子に腰掛けている。
頭にはいわゆるポロス形の頭飾りを被り、その上から肩にかけて長いショールをまとっている。
このショールと下半身にまとったローブはたくさんの房飾りのついたカウナケスと呼ばれる素材でつくられている。

 「古代シリア文明展」カタログ 

ルーヴル美術館のエビフ・イルの像をご紹介したことのある、羊似の衣装カウナケスを着た人物の像をもうひとつ。

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「デデ・コルクトの書」第八話

ひつじ話

串が焼けると、バサトは手に取った。
その名も麗しきムハンマドに讃辞を送ると、串をデペギョズの目に当てた―デペギョズの目が潰れた。喚き声をあげ、山や岩が谺するほど叫んだ。
バサトは飛び跳ねた。羊の間に紛れ込み、洞穴に入った。
デペギョズはバサトが洞穴にいると分かったので、洞穴の入り口に陣取り、片足を入り口の端に、もう片足をもう一方の端に置いた。
彼が言うには、「おい、羊の頭(かしら)、牡山羊よ。一頭一頭来て通るがよい」と。
一頭一頭やって来て通った。彼はすべての頭を撫でた。
「一歳羊たちよ、我が幸運よ、額に白い斑のある牡羊よ。来て通るがよい」と言った。
一頭の牡羊がその場から跳ね上がり、伸びをした。すぐさまバサトは牡羊に飛びかかって喉を切るとその皮を剥いだ。
尾と頭は皮につけたままにしておいて、その中に入った。

15世紀ごろにアナトリアで編纂されたと推定される英雄叙事詩「デデ・コルクトの書」から、第八話「バサトがデペギョズを殺した物語を語る」を。英雄が、一つ目にして人食いの怪物を退治するお話ですが、「オデュッセイア」ですよね、これ。
巻末の解説によると、他に「千夜一夜物語」にも類似点を持つお話があるそうなので、いずれ探して参ります。

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「ぼくの羊をさがして」

ひつじ話

ところが、羊が見えてきた。あっちにも、こっちにも、羊、羊、羊! トラックが止まった。まわりに、羊が押しよせてきた。でっかい、むくむくの毛布みたいだったよ!それが、メエー、メエーって鳴くんだ。そのくさいこと! うん、それが、羊のにおいだったよ。
ボブさんが運転台からおりて、羊を押しのけながらトラックの後ろにまわってきて、荷台の柵を下げた。大人の犬たちが、ひょい、ひょいと飛びおりた。と思うと、もう羊を誘導しはじめた。こんなのは、らくな仕事さ、というふうに。
ぼくは、思わずしりごみした。おなかのどこかが、ふにゃふにゃになったみたいな気がした。だって、羊ったら、みんなぼくより大きいんだ。おまけに、もう、いーっぱいいた。広い世界には、こんなにたくさんいるのか。どうやって数えるんだろう? そう思ったよ!

ヴァレリー・ハブズの児童文学です。
牧場に生まれ、牧羊犬を天職と信じるボーダーコリーの子犬が、わけあって陥った長い放浪の日々。そこから彼を救ったものは、天職を知る者の誇りであり、友情であり……。少年の成長譚として読んでも素敵な物語です。犬ですが。

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「ドクター・ヘリオットの動物物語」

ひつじ話

「おれがこいつにしてやれることはあまりなさそうだ」とロブは唸るように言った。
「獣医さんにできることはなにかあるかね?」
「そうだね、注射ぐらいはしてやれるが、この羊に必要なのは面倒をみてやる子羊なのさ。あんたも知ってのとおり、こういう状況の雌羊は自分を忙しくさせるものがないと、いつもあきらめてしまう。この雌羊に与えられる余った子羊はいないかね?」
「今はいないな。でもこいつには今すぐ必要なんだよな。明日じゃ遅すぎるんだ」
ちょうどその時、見慣れた生きものがぶらぶらと視界に入ってきた。
栄養を求めて羊から羊へとさまよい歩いているその姿が、歓迎されない子羊のハーバートであることはすぐにわかった。

ジェイムズ・ヘリオットの「ドクター・ヘリオットの動物物語」から、「みなしご羊ハーバート」を。
あばらの浮いたみなしご子羊ハーバートと、死産のために弱り切った雌羊が母子の縁を結ぶまでを描く、心あたたまるお話です。

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ブーシェ 「眠りを妨げられて」

ひつじ話

「眠りを妨げられて」 「眠りを妨げられて」(部分)

フランソワ・ブーシェを。磁器人形のような少女羊飼いが愛らしい、「眠りを妨げられて」です。
これまでにご紹介したブーシェは、こちらで。

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中世の風景

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阿部
 それは人によってちがうということはありませんか。つまり、定住者からみれば絶対的空間として入会であるということがあるとしても、別の階層の人にとってみると、すべてが野であるというふうに……。
(略)
石井
 それは天皇から特権を得たということが出てくるわけです。特許状を持っているんだということで、文書をふりかざしてくる。
阿部
 ヨーロッパでは、それに当たるのはジプシーのほかは羊飼しかいまのところ見つからないですね。彼らには第一次大戦後まで、国境なんてものがなかったわけです。ドイツからパリまで羊を追って売りに行ってしまう。(略)
樺山
 まったくの中世とはいえないんですけど、たとえば一番はっきり出るのはスペイン王国の場合です。半島の北と南、何百キロを、一年サイクルか三年サイクルというのもありますけど、周回路があるわけですね。もちろん道路を通るとは限らないわけで、畑の中を突っ切って行くとか、羊が踏み荒らして困るということが、かなり早くから出てくる。イベリア半島をぐるっと一周する羊の道というのは、みんな国王の特許なんです。ただここには、期待するほど国王の呪術的な性格があるとはいえないんです。

先日の「ドゥムジ神とエンキムドゥ神」以来、牧畜民と農耕民の対立について考えていたんですが、中世史家四人による討議録「中世の風景」にあった話題が参考になりそうでしたので。無主の地としての山野河海について東西を比較するにあたって、スペインのメスタが例示されています。
とはいえ、移動民ゆえに頼られる場面も無いではないようですよ。

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プッサン 「聖家族、四人」

ひつじ話

「聖家族、四人」

「ディアナとエンデュミオン」に続いて、ニコラ・プッサンをもう一枚。「聖家族、四人」です。
これまでにご紹介している聖家族を描いたものは、こちらで。

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