ユリシーズの部下たちを野獣に変えるキルケー
この主題はホメロスの《オデュッセイア》第10巻に基づいたものである。
美しい魔女キルケーは料理と酒でユリシーズの部下たちを誘い、やがて魔法の杖をふるって、彼らを獣に変えてしまう。
古代の廃墟のような中に座ったキルケーの顔には、満足そうな表情が浮かび、体からは不気味な光が放散している。
彼女の足元の本には、占星学の記号がびっしり書かれている。
他に打ち捨てられた鎧一式、そしてフクロウ、孔雀、雄鹿、羊、犬などに変えられた部下たちの姿がある。
以前ご紹介したベネデット・カスティリオーネ「メランコリー」の解説を見かけましたので、あらためて。
頬杖をついたポーズ以外は、メランコリーでもなんでもないのですね、じつは。
「オデュッセイア」の当該場面を、下に。
キルケは一同を中へ招じ入れると、ソファーと椅子をすすめ、彼らのために、チーズと小麦粉と黄色の蜂蜜とを、プラムノスの葡萄酒で混ぜ合わす。
その上さらに、故国のことをすっかり忘れさせるために、恐ろしい薬をその飲物に混ぜた。
一同がすすめられるままに飲み乾すや、キルケは直ぐに彼らを杖で叩きながら、豚小屋へ押しこめてしまった。
今や彼らは頭も声も毛も、またその姿も豚に変わったのだが、心だけは以前と変わらぬままであった。
キルケのかかわるオデュッセイアの場面として、他に第十一歌をご紹介しています。