銅カイチ

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銅カイチ
銅獬豸(どうかいち、一角獣)
魏―西晋時代(220年―316年)
長さ70.2?
甘粛省酒泉市下河清(出土 1956年)
甘粛省博物館蔵
一角獣は伝説の神獣「獬豸(かいち)」で、人の正邪を判別し、不正なものを突くといわれる。
また、麒麟や鳳凰などと並び、祥瑞を表す動物でもある。
副葬においては鎮墓や魔除けの意味をもち、通常、墓門の中央に置かれた。

「シルクロードの煌めき―中国・美の至宝」

羊似の幻獣カイチについては、これまでにもいくつかお話をしているのですが、こちらは西晋の頃の副葬品です。あんまり、というか全然、羊じゃないですね……。

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デューラーの星図

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デューラーの星図 デューラーの星図(部分)
はじめて星図が印刷されたのは1515年ニュールンベルクにおいてである。
それはデューラーが木版画としてデザインしたもので、以後3世紀の間、印刷された星図というジャンルが形成される中で絶大な影響をおよぼした。

アルブレヒト・デューラーの意匠による、印刷されたもっとも古い星図です。
デューラーは「テオクリトスの『牧歌』のための扉絵細密画」などを、星図はフラムスチード天球図譜を、これまでにご紹介しています。

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ルーベンス「アンブロジオ・スピノラの肖像」の複製版画

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ピーテル・デ・ヨーデ「アンブロジオ・スピノラの肖像」 「アンブロジオ・スピノラの肖像」(部分)
ルーベンスの油彩画は、剣を手に、甲冑を付けた武人としてのスピーノラの姿が勇ましく堂々と描かれている。
ピーテル・デ・ヨーデの版画では、多くの肖像版画と同様、装飾的な額縁におさめられた半身像となった。

「ルーベンスの版画展 ルーベンス工房の版画家たち」

前にご紹介した、ピーテル・パウル・ルーベンス「アンブロジオ・スピノラの肖像」を原画とする、同時代の複製版画です。胸に金羊毛騎士団勲章。
ルーベンスの作品についてはこちら金羊毛騎士団関連はこちらをご参考にどうぞ。

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ティツィアーノ 「田園の奏楽」

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「田園の奏楽」 「田園の奏楽」(部分)

ティツィアーノ・ヴェチェッリオの「田園の奏楽」です。牧歌の世界ですね。より正確には、夭折したジョルジョーネの未完の作をティツィアーノが完成させたものとのこと。
今までご紹介しているティツィアーノについてはこちらを。
牧歌つながりでは、テオクリトスウェルギリウスなどをご参考にどうぞ。

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小川一水 「天冥の標〈1〉―メニー・メニー・シープ」

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無人の街路を羊が一頭歩いていく。
エランカ・キドゥルーは官庁街にある自分のオフィスで、表に面した窓からその光景を見ていた。不思議にも、奇妙だとは感じなかった。この時間だったら、そんなことがあってもいいような気がした。
   一巻のためのあとがき
 はい、いかがでしたでしょうか。天冥の標、第一巻。
「ちょ、おいィ!?」と叫んでいただけましたか。これはそういう本です。

小川一水の新作SFです。全10巻予定の長編シリーズ開幕編。
メニー・メニー・シープと名付けられた土地を舞台として、あまたの勢力の興亡と魅力的な人々の活躍、孤高を持する羊飼いたちの一群、謎をはらんで推移する激しい展開、が描かれると思いきや、「ちょ、おいィ!?」と叫ぶしかないあたりで「つづく」を食らわされます。次巻は、次巻はいつ出ますかー。

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ブーシェ 「フルートのレッスン」

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「フルートのレッスン」

「ロー・コレクション 西洋絵画500年の巨匠たち展」

「雅な羊飼い」に続いて、フランソワ・ブーシェをもう一枚。「フルートのレッスン」です。似たテーマですが、こちらは羊飼いたちが少年少女ですね。

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パブの看板と紋章の関係

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パスカル・ラムを描いた紋章パスカル・ラムを描いた紋章続き
A.ルアーン市(フランス)、B.デブラツェン市(ハンガリー)、C.パース市(スコットランド)、D.イギリスのミドゥル・テムプル
『子羊と旗亭(The Lamb & Flag)』という屋号を聞くと、キリスト教徒でない読者のほとんどは、なぜ子羊と旗の組み合わせなのかという疑問を持とう。
これは「パスカル・ラム(paschal lamb)」といって、イエス・キリストを旗をかつぐ子羊で表現した図形を指すもので、西洋の紋章ではよく使われる図形でもある。

以前ご紹介した、森護による英国のパブの看板に関する本をもう一冊。「都市の紋章」の具体例が載せられていましたので、そちらを。

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マザーグースのイラスト事典から

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Baa,Baa,Black sheep
H.S.Marks, Nursery Rhymes(London,1872-78)
羊の横には、“for master”“for dame”“for the little boy”と書かれた袋が置かれている。
人間が羊に頼んで羊毛をゆずってもらう場面。

18世紀から20世紀、英米で出版されたマザーグース本のイラストを集めた事典から、「Baa,Baa,Black sheep」の一枚を。
マザーグースにおいては、いかにイラストレーターの解釈が重要であるかがよく理解できる本なのですが、なかでもこちらは皮肉が良い具合に効いてそうです。

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宮城谷昌光 「華栄の丘」

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「戦いは一日で終わる。よけいな糧食は腹におさめてしまうにかぎる。士に羊をふるまってやれ」
 士は甲兵といいかえてもよい。かれらの夕食に羊の肉を頒けあたえることにした華元は、そうとうなゆとりをもったということである。戦勝の前祝いというにおいさえする。
 甲兵の歓声を耳にするころになって、華元はあわてて士仲を呼び、
「わたしの御者の羊斟には、食わすな」
 と、むずかしい顔で命じた。羊という氏姓をもった者が、羊の肉を食べる、ということに不吉さを感じた。華元の感覚は繊細なのである。羊を食べさせるつもりが、羊に食べられるのはよくない。肉には神霊が宿るという宗教的意味あいにおいて、羊斟だけがその霊力をさまたげるのではないか、と華元の脳裏にひらめいたのかもしれない。
 そのため羊斟だけが、羊料理にありつけなかった。
 翌日は二月十日であり、その日は華元にとって大凶となる。

羊の羮のうらみ(続き)でお話した華元の失敗がどうにも腑に落ちなかったので、宮城谷昌光の小説「華栄の丘」を見てみましたら、このような解釈になってました。ああ、そんな理由で……。

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ポンペイの壁画

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ポンペイの壁画 ポンペイの壁画(部分)
ポンペイ、?,7,7(サケルドス・アマンドゥスの家)、南壁
そそり立つ岩を背景に聖なる老木と盾を結び付けた円柱が中央にあり、その手前にポリュフェモスが横たわる。
左手にシュリンクスを持ち、左膝に牧杖を立てかけ、左側のイルカに乗るガラテイアを見遣っている。

ヴェスヴィオ山の噴火によって埋没したポンペイに残された壁画群のなかに、以前お話した「変身物語」のポリュペモスを描いた神話画が。羊も四頭ほど連れているようです。

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史記 韓信・盧綰列伝

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盧綰(ろわん)は豊(ほう、江蘇省)の人で、高祖と郷里が同じである。
盧綰の父と高祖の父の太上皇とは仲よしであり、子を生むにあたって、高祖と盧綰は同じ日に生まれた。
里中の人々は羊肉と酒を持っていって両家を祝福した。
高祖と盧綰が成人すると、ともに書を学び、また仲よしであった。
里中の人々は、両家の父どうしが仲よしで、同じ日に子を生み、その子が成人してまた仲よしであるのをめでたいとして、ふたたび両家に羊肉と酒をおくって祝福した。

史記、韓信・盧綰列伝から、盧綰高祖劉邦のエピソードを。

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「笑林」

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ある人、いつも野菜ばかり食べていた。
ある時、いきなり羊の肉を食べたところ、五臓神が夢にあらわれて言った。
「羊が野菜畑を踏み荒らした。」
○五臓神=心臓、肺臓、肝臓、腎臓、脾臓のそれぞれに宿る神。合わせて五臓神という。

後漢の邯鄲淳が編んだ最古の笑話集「笑林」から。
笑話集つながりで、「笑府」もどうぞ。

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「火天」と「青羊」

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仏法においては、上下・日月・四方・四維を守護する天衆を「十二天」とする。
則ち、梵天(上)、地天(下)、日天(日)、月天(月)、帝釈天(東)、閻魔天(南)、水天(西)、毘沙門天(北)、火天(東南)、羅刹天(西南)、風天(西北)、大自在天(東北)であるが、これらを総称して十二天という。
この十二天のうちの一つ、「火天」の様相については、
(略)
則ちその身体の色は火色を象って深赤色、身体の中心にもまた炎を象徴する三角印を持し、青羊に乗っている、という。
仏教の諸物諸天の造像の中にも私見によれば五行の法則が多数みられるが、「青羊に乗る火天」もまたその好例の一つである。
「火天」則ち「火」であって、この火を生むもの、火の母は「木生火」の理によるときは「木気」。
木気の尽きるところに火が生れるので、出来れば終りの木気が好ましい。
その木気は三合では、
  ・亥(猪) 生
  ・卯(兎) 旺
  ・未(羊) 墓
となり、羊は木気の墓(ぼ)、終りである。
(略)
火天の場合もその羊は、火を生み出す母としての羊である以上、木気でなければならず、それが(略)木気を象徴する「青」の羊なのである。

吉野裕子による、陰陽五行思想と日本の民俗との関わりについての論考から、十二天の火天が乗る青い羊に関する一文を。
陰陽五行の持つ法則のうち、「木は火を生じる」という「相生」にしたがえば、「火」天の乗り物は「木」、それも「生・旺・墓」(始まり、壮んになり、終わる)という「三合」の法則の終わりに相当するものでなければならない。これにあたるのが「青い羊」である、というお話です。

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シャルル=エミール・ジャック 「羊の群の帰り」

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「羊の群の帰り」
羊飼いが絵の主役になることは少ないジャックの通例に反して、ここでの中心は女性の羊飼いである。
また、そのすぐ下で後ろを振り返っている羊に注目したい。
ジャックは、羊のさまざまな習性を観察して描いた画家といわれ、「羊のラファエロ」の異名をとっており、似たように見える羊でも、ジャックの羊は、個性を持って描かれている。

「中村コレクション秘蔵の名品 コロー、ミレー バルビゾンの巨匠たち展」カタログ

シャルル=エミール・ジャックの「羊の群の帰り」です。
これまでご紹介しているジャックの絵は、まとめてこちらで。

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ロングフェロー 「エヴァンジェリン」

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一番先きに鈴を下げて、エヴァンジェリンの綺麗な仔牛は、
雪のやうな白い毛色と、頸輪にひらめくリボンを誇つて、
まるで人間の情を解するもののやうに、静々と歩いて行つた。
次に、鳴く羊の群を連れて、羊の好きな海岸の
牧場から羊飼ひが帰つて来た。其後ろには番犬が、
根気好く、重々しく、又自分の直覚をさも得意気に、
堂々と、落着いて、羊の群の端から端へと、歩いたり、
房々した尾を振つたりして、落伍の羊を駆り立てて居た。
羊飼ひの眠むる時、番犬は代つて羊の支配者であつた。夜霧が降つて、
星の照らす静けさを、狼が吠える時、彼は羊の保護者であつた。

19世紀アメリカの詩人ヘンリー・ワーズワース・ロングフェローの「エヴァンジェリン」から。
18世紀半ばのアカディーを舞台にした、戦争のために引き裂かれた恋人たちの放浪と再会の物語。引用はその冒頭部、いまだ平穏を保つ幸福な村に暮らすヒロインの姿が描かれます。

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