古代の裁判には、のちのような証拠主義がとられないで、神判が用いられた。
(略)
種々の神判のうち、羊神判が最も正統的なものであった。
(略)善はもと、羊と二言に従う字であった。神羊の左右にそれぞれ言を加えているのは、原告・被告の当事者を示す。
言はサイ上に辛(はり)を加えて盟(ちか)う意味で、もしその盟誓に偽りがあれば、辛を加えて入墨の刑を受ける意を示したものである。
善は羊神判におけるカイタイの正面形の羊と、当事者の誓約を示す二つの言からなる字であった。
従って善とは、神判において神意にかない、勝訴をうることをいう。
勝訴者のカイタイには、文身の文様である心字形の飾りを加えた。これを慶という。
以前ご紹介した白川静の羊神判のお話について、あらためて。引用の文字資料は、右のが「善」で左が「慶」。
神羊関係では、他に『五雑組』の「皐陶と神羊」とカイチのお話をしています。落合芳幾の「新板毛物づくし」もご参考にどうぞ。