「誹風柳多留」の、「紙を食う」以外の羊イメージ

ひつじ話

 長安の居酒屋 葱に羊なり      (五六篇・18)
 未たか 末たか 未た わかりかね (六〇篇・26)
 和の羊 おもに上総で 出生し    (七一篇・14)

前回ご紹介分の「俳風柳多留」といい、「本草網目啓蒙」「本朝食鑑」髪結の通り言葉といい、「和漢三才図会」といい、紙を食う以外の羊イメージは無いのかと、あらためて「俳風柳多留」を広げたら、じつはいろいろありました。
ひとつめのは、李白が飲んだくれている様子。中国の人ですから、酒のアテも羊肉です。ふたつめは言葉遊びとして。最後のものは、筆の異称として。上総は筆の産地だったのですね。

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「むちむちポーク!」

ひつじ話

ポークフィレ将軍護衛室
ポークフィレ将軍護衛室勤務の、ポークフィレのお世話係。
「ウィング」「サーロイン」「ラム」「サクラ」の4人。

元祖むっちり系縦スクロールシューティングゲーム「むちむちポーク!」の敵キャラにひつじがいるよ、とカーター卿さんに教えていただいたのが、もう半月くらい前になるでしょうか。ありがとうございます。遅れてごめんなさい。
敵中ボス「ラム准将」が三面ボスなのはわかっています。アーケードゲーム誌「アルカディア」の攻略情報だって読みました。
プレイしてきました。
プレイしてきました……
なんというか、まず、何食わぬ顔をして前に座ることに、勇気が必要な気がしました。
あげくに、二面目がクリアできません。ラム准将撃破をめざして、シューティングゲーマーの助力を希います(真剣)。

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ミレー 「オーヴェルニュの山の牧場」

ひつじ話

ミレー 「オーヴェルニュの山の牧場」

ジャン=フランソワ・ミレーの羊飼いの少女を描いた一枚。似た感じの、「羊飼いの少女と羊の群れ」をご紹介したことがありますが、こちらはさらにローアングルです。シカゴ美術館蔵。

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平山郁夫 「牧童」

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平山郁夫 「牧童」

平山郁夫の「牧童」です。中近東の遊牧民ですね。

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「ディアルミドとグラーネの恋物語」

ひつじ話

「ディアルミドはある日、フィアナ戦士団の三人、コナン、オスカル、それにゴル・マク・モルナと狩りに出かけた。一日中狩りをして、山のふもとに日が陰るころ、四人は山小屋を見つけた。そこには老人と娘が、牡羊と猫と共に住んでいた。
戦士たちは宿を乞い、老人は快く中に入れてやった。ところが四人が食事の席についたとたん、羊が食卓に跳び乗って皿や杯をあっちこっちに蹴り飛ばしてしまった。あまりにも無礼なふるまいに戦士たちは腹が立ち、食事も喉を通らない。四人はかわるがわる牡羊を引き下ろそうとするが、羊は男たちを振り払い、足で踏みつけて、まるであざ笑うかのようにメェーッ、メェーッと鳴きたてる。みっともないありさまだった。
そこへ老人が現れ戦士たちを嘲るように一瞥すると、猫に向かって、羊をのけろ、と言った。すると猫は後ろ脚で立ちあがり、前脚で羊の首をつかんで首輪をはめ、静かに食卓から下ろして小屋の隅の羊小屋の鎖につないだのである。面目を失った四人の戦士は席を立って山小屋を出たのだった。」
 ドルイドは、他の者に聞かれないよう、顔をグラーネに向けて低い声で話した。一方グラーネはそこまで慎重ではなく、話を聞いている間じゅうディアルミドから目を離さない。ドルイドは話を続けた。
「戦士たちが山小屋の戸を閉めて夜の闇に出ていくと、小屋の老人は四人の後を追って呼び戻し、こう言った。『お前さんたち、いま見たのが魔法だったことがわからんのかね。』老人は、たったいま起こったことが何を意味しているのかを、四人に話してやった。『お前さんたちの相手をした羊は、世界そのもの、つまり生の力じゃ。それから猫は、それとは正反対の力、つまり死の力、暗闇じゃ。』

先日、「キルフフとオルウェン」のお話をご紹介した「ケルトの神話・伝説」から、もうひとつ、アイルランドの伝説「ディアルミドとグラーネ」を。

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「キルフフとオルウェンの物語」

ひつじ話

最初の難題は、幻影のような巨城。一行の誰もがかつて見たこともない壮麗な建物だった。しかしいくら馬を走らせても近づくことができず、彼らはとまどった。
城の前には、大群の羊が見渡すかぎり広がる平原で草を食んでおり、小高い所から一人の羊飼いが数千もの羊を監視していた。恐ろしい姿の男だった。羊一匹とて見失ったことのないのが彼の誇りだというが、牧羊犬のせいで羊には近づけそうにもなかった。馬のように大きく醜怪で、その息は全てを焦がしてしまうのだ(たぶん羊は除いて)。
キルフフたちは通訳に羊飼いと話をさせようとしたが、独りで行くのをいやがったので、魔法使いが牧羊犬に魔法をかけてから、ようやく皆で羊飼いに近づくことができた。そして、この巨大な城砦が巨人の王のものであることがわかった。

ウェールズの伝説から、アーサー王の従兄弟キルフフの冒険譚「キルフフとオルウェン」を。

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羊形兕觥(じこう)

ひつじ話

羊形兕觥
西周前期
高16.0センチ  藤田美術館蔵

青銅の酒器です。写実的ですね。とくに角が。
古代中国の青銅器に関しては、四羊銅方尊のフィギュアと、林巳奈夫「神と獣の紋様学」と、司母辛兕觥と、四羊乳釘文瓿をご紹介しています。

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シェイクスピア 「冬物語」

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第四幕
第三場  羊飼いの小屋近くの道路
(略)
道化登場。
道化  えーっと、羊十一匹からとれる毛の目方は二十八ポンドだ、そいつを金になおすと、一ポンドちょっとだ、するってえと、羊千五百匹の毛を刈ると、いくらになるかな?
オートリカス  (傍白) 罠にかかってくりゃあ、あの鴨はこっちのもんだぞ。
道化  こいつは計算器でもなきゃあ計算できないや。えーっと、毛刈り祭りの仕度になに買うんだっけ?  砂糖が三ポンドだろ、干し葡萄が五ポンドだろ、それに米か―妹のやつ、米をどうしようっていうんかな。とにかく父さんが妹を祭りの女王にしたんで、景気よくやらかそうっていうんだろう。羊の毛を刈る連中に花束を二十四個も作ってやったもんな、三人一組の歌を歌う連中だ、みんなダミな男で、声までダミ声でやがる。

シェイクスピア「冬物語」の、後半部分の最初の場面です。荒野に捨てられ、羊飼いに拾われた王女は、人の良い羊飼いの育ての父と兄の元で美しく成長しています。人が良すぎて、ゴロツキのオートリカスにだまされる場面から始まってますが。

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水墨画の描法

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基本形からの描法 (1)
基本形からの描法(1)
卵形を基本形として描く。まず卵形の頭部の形を大きく掴んで描く。次に首部を描き胴体を大きな卵形で形どり、四肢を描く。
筆に淡墨を含ませて軽く大きな基本形を描いて、中墨・濃墨を筆に含ませて顔、口、耳、首、胸、背中、前肢、後肢とシッカリした描線で描く。特に四肢の動勢の形をよく掴んで描くことが大切である。
基本形からの描法 (2) 牡羊の描法
基本形からの描法(2) 牡羊の描法
体躯が卵形よりもむしろ矩形のまるみをもった形であるから、大きく全体の形を掴んで描くとよい。

水墨画の羊の、基本的な描き方・・・ですが・・・最終段階とその前段階の間をもう少し・・・その・・・。

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羊の祖先たち

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ムフロンとビッグホーン
現在、ヒツジは世界中に広がり、品種としてはっきり区別できるものが200種以上、それらの亜系を含めれば1000種を優に越える。
これらの家畜化されたヒツジの祖先は、ヨーロッパと南イランにすんでいたムフロン Ovis orientalis、中央アジアの山岳地にすんでいたアルガリ O. ammon、北イランからアフガニスタン、北西インドにすんでいたウリアル O. vignei、カナダ、アメリカのロッキー山脈にすむビッグホーン O. canadensisの古代ヒツジに遡る。
現在では、染色体の研究により、家畜化されたいまのヒツジはムフロンに由来するものであろうと考えられている。
<写真左>ムフロン   コルシカやキプロスに野生する、家畜ヒツジの主要な祖先種の一つといわれる。体高75?ほどと体型は小さく、赤褐色の毛色であるが、ウール(羊毛)ではなくヘア(さし毛)で覆われている。
<右>ビッグホーン  カナダやアメリカのロッキー山脈の中で生きているヒツジの野生種。その名の通り大きく美しい角は、山の自然を愛する人たちの憧れの的であった。家畜化されたヒツジの原種ではないが、家畜ヒツジの間に妊性をもつ唯一の野生ヒツジである。

 「週刊朝日百科 動物たちの地球122 ウシ・ヒツジ・ヤギほか」 

羊文の錦でふれたムフロンを含めたヒツジの祖先について、あらためて。
アルガリについては、「コレクト倶楽部」の四羊銅方尊や野生動物保護関係のニュース(これこれこれ)で、何度かお話したことがありますね。ビッグホーンも、横浜の金沢動物園のニュースで一度。

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龍の起源としての羊

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 唐代の伝奇小説『柳毅伝』は、科挙試験に落第した書生・柳毅が困っている龍女を助けたため、最終的に龍女と結婚して億万長者になる物語であるが、この物語は実際、龍と羊の関係をよく示している。 (略) 
龍女が飼っている羊は実際羊ではなく、「雷獣の仲間」、つまり雷神なのである。羊は雷神である以上、天上の存在と見てよいわけだが、実は、中国北方の龍神文化の支配者・黄帝も雷神である。黄帝が龍そのものであるから、黄帝と同じ雷神の資格を持つ羊は当然龍と本質的な接点を持っているのである。
(略)
 羊は、中国北方の漢民族の一番の好物であると同時に、天上の雷神への最高の犠牲でもある。したがって、羊はしだいに雷神の仲間であるという文化的コードを持つようになったのであった。

「柳毅伝」の羊の謎は、以前お話はしたものの、いまひとつすっきりしないので少し調べてみたのですが・・・なんだかあらためて謎が深まってしまいました。
龍は無数の構成要素を抱えた幻想動物ですが、その中に羊も含まれるようです。こちらの「龍の文明史」には、「古代の龍に関する文献には、その角が羊の角に似ている龍がよく見られる」との記述もありました。今、龍の角といえば鹿ですが、・・・やっぱり巻き角だと威厳とか威圧感とかに欠けるのかもしれません。

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本岡類 「羊ゲーム」

ひつじ話

「羊ですって?」
 思わず、大きな声が出てしまった。
「あ、は、はい。あの動物の羊ですけど」
 驚いたように目を見開いて、未緒は答えてくる。念を押した。
「羊を放牧する商売、あの羊毛をとる羊を放牧する商売、と言ったんですか」
(略)
 東京で羊を放牧する、とは、いったい何を意味するのか。むろん、土地一坪が何百万円もするこの東京で、実際に羊を飼って商売になるはずがない。
「羊ゲーム、と言ったりはしませんでしたか」
 永島は訊いた。
「羊ゲームですか」
「ええ、羊ゲームです」

本岡類のミステリです。殺された青年が残した本の、「羊ゲーム」という不思議な書きこみ。謎の言葉を追って、刑事がたどり着いた場所とは。

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羊文の錦

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羊文錦
樹木と鳥獣を組み合わせるモティーフは西アジアに古くからあり、ことにササン朝の銀器や織物、ストゥッコの建築装飾などに愛用されていた。それらは少なくとも古代イランでは天空信仰にもとづく聖樹や聖獣と考えられていた。
野生の羊ムフロンはしばしばその角の形から月のシンボル、樹木は天空の海にはえ、生命の水を与える聖樹を意味していた。エジプトのアンティノエで発見された羊文錦は、連珠文の首飾りをつけ、リボンをひらめかして歩くムフロンの姿を織りだしているが、角を左右に雄々しく巻きこみ、耳をうしろにそろえて、堂々とした体躯に威厳させ感じさせる姿態は、正倉院の羊木屏風のものと瓜二つである。
ただ正倉院の羊はリボンがない。だが染めのくずれではっきりしないが、連珠文の首飾りをかすかに認めることができ、それだけでもこの意匠がササン美術の反映を立証しているといってよい。

「日本の美術〈6〉シルクロードと正倉院」に、6?7世紀(ササン朝)の羊文の錦が、正倉院宝物の「羊木臈纈屏風」との関連で載せられています。
ムフロンについては、ちゃんとご紹介したことがありませんでしたね。これとかこれとかくらい。
動物画像サイト「ZOO 21st ?21世紀の動物園?」さまでイイ顔のムフロン写真をお見かけしましたので、そちらをぜひ。
ZOO 21st ?21世紀の動物園?

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揺銭樹

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揺銭樹
後漢時代(1?3世紀初)の四川省の墳墓からしばしば出土します。青銅の樹木には円形の銅銭が実り、幹を揺らせば、銭が雨のように降ってくる、労せずして莫大な財が手に入る「金のなる木」なのです。漢代の人々は、あの世でもお金に困らないようにと、この「夢の装置」を死者への餞にしました。
(略)
揺銭樹には、こうした羊が樹幹を支える形式のものが少なくありません。金のなる木と羊の間には、どのようなつながりがあるのでしょうか。
(略)
揺銭樹の形を見てください。横棒が一本多いですが、全体として「羊」の字形に似ていませんか。揺銭樹の枝は自然の樹木と違い、真横に張り出す形が普通で、結果として樹上の鳳凰と合わせて「羊」の字形に似るのです。羊の上に「羊」字形の樹木をたてることにより、「羊上加羊」という構図となり、文字を変換して「祥上加祥」(次々と良い事が起こる)という意味が添えられます。

東京国立博物館蔵の揺銭樹です。羊は、字形つながりで「祥」、音では「陽」と通じ、中国ではおめでたい図柄の中で使われることが多いようです。こちらは「祥」のほうですね。
玉瑞獣をご紹介したときにも、少しふれています。

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