牛肉と羊肉をすこしも食べないでいると、イギリス人の体質はいつか重大な支障をきたすにちがいない。
われわれは海外にきわめて多くの属領を有する小さな島国の国民であるがゆえに、当然はるかなる東洋の土に派遣されて、長いあいだ故郷とのいっさいのつながりを断たれ、流刑にも似た状態におかれるようなこともありうるというふうに考えるように育てられている。
年々何千、何万という人びとを両親のもとから巣立たせる仮借なき必然に、われわれがなんと冷静にしたがっていることか、そして知友や親戚とも離れ、社会的・知的な交際を奪われても、いかに耐え忍んでゆくことか、じつに驚くべきものがある。
ところで、読者は、何ヶ月ないし何年にもわたって牛肉や羊肉を味わえないということがどんなものであるかを、切実に感じたことがあるかどうか。
そういう目にあったことのない人びとには、このような状態のもとではとうてい健全な精神を保持することは不可能だといいたい。
先日のアンベール「続・絵で見る幕末日本」に続いて、幕末の西洋人による日本見聞記をもうひとつ。ラザフォード・オールコックの「大君の都」です。食生活が思うに任せないことについて苦しんでいるようですが、その、そこまで……?