カラヴァッジオ追随者のひとり、バルトロメオ・マンフレーディの「イサクの犠牲」です。カラヴァッジオのほうの「イサクの犠牲」も、以前ご紹介してます。
「宙の名前」のおひつじ座写真
牡羊座
十二月下旬の夜八時ごろ頭の真上近くにやってくる星座で、三角座の南で小さなゆがんだ三角形を描いています。
林完次の「宙の名前」から、おひつじ座の写真など。対応イラストと見比べながら探すと見つけやすいかと思うんですが、どうでしょう。
「ペルシャ文明展 煌めく7000年の至宝」のリュトン
銀製羊頭付きリュトン silver rhyton with three sheep heads
前1千年紀前半 ルリスタン州キャルマーキャッラ出土
銀 長・・・23.0 経・・・13.0
リュトンの底部に動物の頭部が用いられることはしばしばあり、最も多いのはライオン頭部である。本作品のように3つの頭部が表されるのは珍しい。キャルマーキャッラ洞窟遺跡では多くの優れた金属製品が発見された。「ペルシャ文明展 煌めく7000年の至宝」展図録
愛知県美術館で12月10日(日)まで開催されている、「ペルシャ文明展 煌めく7000年の至宝」に行ってきました。土器の羊頭リュトンと、金の羊頭リュトンと、銀の羊頭リュトンがありました。リュトンは一度ご紹介したことがありますが、こんなにバラエティにとんでいるのですね。あと、水差しとおぼしき、愛らしい羊型の土器もありました。
こちらの展覧会は、愛知県美術館のあと、2007年 2月 6日 – 3月25日 北海道立近代美術館、 4月 13日 – 6月17日 福岡市博物館、7月 11日 – 9月17日 大阪歴史博物館、に巡回するようです。お近くならばぜひぜひ。
黄金の蹄をもつ家畜
イギリスではヒツジは〈黄金の蹄〉をもつ家畜といわれ、牧草地への放牧が奨励される。牧草はこの動物の群れに踏みつけられることによって丈夫になるうえ、牧草を根元のほうから食べつくすことで草を刈りそろえる手間も省けるからである。ヒツジをゴルフ場の芝生に放せば、芝刈りがいらなくなる理屈だ。ところが芝生でなく通常の野草の多い中国などではヒツジを放牧すると土地が荒れるといわれ、むしろウシの放牧が好まれる。牧草とちがって野草の場合は生長点が高く、ヒツジの食べかたでは草が根絶やしにされてしまう恐れすらある。それに対して、ウシは長い草の先端部だけを選んで食べるため、残った短い草がまた茂ってくる。家畜にもそれぞれ合った土地があるという好例だ。
同じイギリスでも、前にお話した「セルボーンの博物誌」では、ヒツジの害のほうが取り上げられていたものですが、こういう言葉もあるのですね。黄金の蹄。国連でだって大活躍ですし。うんうん。
おひつじ座のみつけかた
ペガススの四辺形と、プレアデス星団にはさまれた空間で、もっとも明るい星が、おひつじ座の主星ハマル(α)だ。このあたり唯一の2等星なので、簡単にみつかるだろう。 α―β―γがつくる鈍角三角形も、すこし目をこらせばわけなくみつかる。 ここにうしろをふりかえったヒツジの頭と角をえがくと、プレアデス星団までの空白が、オヒツジのからだということになる。
昨年に一度お話したおひつじ座ネタですが、今年も見頃が巡ってきましたので、あらためて。
ジュエリーのひつじたち
バロック真珠の形を活かした雄羊のペンダント。 真珠博物館蔵。
金、真珠、ルビー、エナメル 1590頃 幅65
天然真珠は、殻の内側に光沢をもつ特定の貝に偶然見出される。 (略) 多くは不正形だが、稀に完全な球形のものもあらわれる。大型の変形真珠はバロックと呼ばれる。その形は宝飾職人の想像力を刺激したと思われ、奇怪な動物のからだに応用した迫力ある装身具が16世紀頃に多く作られた。
象徴的な意味は薄らいだが、愛らしい動物のモティーフは今世紀も好まれた。水牛の角と金の羊の頭部の組み合わせは、1970年代のヴァン・クリーフ&アーペル製。
指輪や宝石は、もともと印章や護符の役割がありましたから、、動物モチーフも多く存在します。でも、この羊たちは純粋に愛でるためのものっぽいですね。愛らしいかと言われると微妙ですが。
ガンマ( γ )
黄道十二宮のなかで牡羊を示す神聖文字はガンマ( γ )であって、この文字は正面からみた動物の角であると同時に、種子から芽吹いた双葉を表している。二つの角は渦巻き状になっていて、その象徴性はよく知られている。内側に旋回しているさまは、知覚がそこをとおって物質を見極めることを示しているという。
(略)
牡羊のもつこのような、予言的な性格はどこにでも見られ、牡羊といえば予言する動物だと相場がきまっていた。エトルリアの古資料のなかでは、世界の新しい秩序の到来は、緋色と鮮黄色に染まった牡羊と真紅に染まった牝羊によって表されていた。
シンボルとしての「牡羊」を、事典でひいてみました。「 γ 」=巻き角=予言・・・。なんだか三題噺みたいです。
UNIQLO PAPER No1
CASHMERE WRAP U$ 59.50
CASHMERE FINE GAUGE CARDIGAN U$ 89.50
これはNY旗艦店オープンに合わせて現地で配布されるフリーマガジン“UNIQLO PAPER”から、一部を抜粋、縮小したダイジェスト版。「TITLe 」12月号 ブックインブック 「UNIQLO PAPER No1」
ユニクロが、いろんな意味でたいへんなことにーことにー。
この情報は、カーター卿さんからいただきました。すみません、タレコミいただいてすぐに雑誌を買ったのに、うっかりしてて、もうすぐ1月号が出そうです。あわててご紹介。
山海経のハクイ
獣がいる、その状は羊の如く、九つの尾、四つの耳、その目は背なかにあり、その名はハクイ。これを佩びると畏(ものおじ)しない。
山海経シリーズです。今回はハクイ。キツネならぬ九尾の羊です。
山海経からは、今までに、土螻、ホウキョウ、葱聾、シンヨウをご紹介しています。
ウルスラグナの動物変身
ゾロアスター教には、変身譚の他に、シャーマニズムとの関連で気をつけて見ていかなければならぬものが、もう一つあります。それは『アヴェスタ』の「ザームヤズド・ヤシュト」に出てくる、クワルナフ(光輪)というものです。クワルナフはある英雄から飛び去って次の英雄に付く、それからまた飛び去るという事をいたします。
(略)
次に羊、これはゾロアスター教の光輪、すなわちクワルナフに関係します。ところで、カウィとは、イラン最古のペーシュダード朝に次ぐ、伝説的な王朝の名ですが、後には帝王の代名詞的意義をもって使用される。そして、カウィのクワルナフは、帝王権そのものを指すようになります。例えば、中世ペルシア語の文献に『アルダシールの行伝』というのがあります。そこで、アルダシールが、パルティアのアルタバノス五世の女を誘惑して逃亡する場面があります。この逃亡者の後を、羊が追いかけて行く。そして羊は追いついて、アルダシールと一緒になる。アルダシールは、アルタバノス五世を破って、ササン朝を開くわけですから、その時に、パルティアにあったクワルナフが、ササン朝のアルダシールに移ったと解釈すべきです。そこで、羊はクワルナフの象徴であるわけです。
何故、羊は王朝と結びつくのでしょうか。これも、エジプト的な背景を考えることが可能です。エジプトの王様の持つ笞や笏は、元来、羊飼いの蠅払いと杖に起源があるとされます。また、雄羊は生殖力が強いので、その象徴として、雄羊の頭をした神があります。ナイル川の神、クヌームです。この神は、国王を捏ね上げて作ったとされ、それを示す浮彫もあります。ギリシア語ではアルサペースと称される、ハリシェフ神も、やはり羊頭で表されます。このアルサペースは、ギリシア人により、ヘラクレスと同一視されました。ヘラクレスとウルスラグナの関係を考えれば、この神も無視できません。
ウルスラグナは、古代イランで崇拝され、ヘラクレスとも同一視された、ゾロアスター教の戦勝神です。この神様は、牛や馬、ラクダ、雄羊といった動物に変身するのですが、上はそのうち、なぜ羊なんかに化けるのかについての、解説の抜粋です。・・・ええと、ということは、ササン朝は、羊が憑いて成立した、ということで良いんでしょうか。
ミレー「羊飼いの少女」
ジャン=フランソワ・ミレーの「羊飼いの少女」です。オルセー美術館所蔵。
こちらをふくむ、ミレーの羊飼いを描いた作品についての興味深い解説を見つけましたので、下に。
冬近い季節らしく厚い頭巾や肩掛けをまとって広い野面を背に、編みものや糸紡ぎをしながら羊の番をしている。 (略) 男の牧人の場合、当時は「得体の知れない、神秘的な存在」とか、星の運行を調べ、天体を探り、時刻を当てる「注意深い自然の観察者」とみなされていたようだが、娘たちはもっと単純で、作者のあたたかな視線が感じとられ、つねに可憐で親しみ深い。
「ゴッホ、ミレーとバルビゾンの画家たち」展図録
ミレーの描く「神秘的な男の牧人」としては、以前ご紹介した「夕暮れに羊を連れ帰る羊飼い」がその代表になるでしょうか。神秘的で、崇高で、・・・ちょっと怖い?
「カルパチアの城」
羊飼いというものを、もしもその理想的な面だけを見るとしたら、想像でその羊飼いは、わけもなくひとりの夢想家、瞑想的な人物に仕立てられてしまう。いくつもの遊星とことばをかわす。彼は星々と話しあう。彼は天空を読む。が、ほんとうのところは、彼は無学でうすぼんやりした動物にも近い人間なのだ。しかし、世間は、羊飼いなるものには超自然的な資質がある、といともたやすく信じこむ。彼は呪いを知っている。自分の気分のおもむくままに、呪いを育て、人びとや獣らに―いずれも同じように―呪いをかける。彼はご自慢の火薬を売る。人は彼から、媚薬と処方箋を買う。彼は田野に魔法の石を投げて、不毛なものに変えてしまうかもしれない。ただ左目で見つめるだけで、牝羊に仔ができないようにしてしまうのではあるまいか?
ジュール・ヴェルヌの小説「カルパチアの城」から、登場人物のひとりである羊飼いについての描写です。前にドーデーの「星」ををご紹介しましたが、似てます・・・ね。こういう共通のイメージがあるのですね。
なお、「カルパチアの城」を原作にした、 「カルパテ城の謎」というコメディ映画があるそうです。・・・コメディというのが気になりますね。観てみたいです。
シンボルとしての「羊飼い」
Shepherd 羊飼い、牧者
羊飼いは、あらゆる群集を導き保護する者、救済者、である。羊飼いは死者の魂の導者でもあり、そこから死者を支配する神と結びつけられるが、この神は羊飼いの牧杖を持物とする。<善き牧者>は、シュメール、イラン(ゾロアスター教)、ユダヤ、オルフェウス教、ヘルメス思想、ピタゴラス主義、チベット、キリスト教など、多くの伝統文化に見られる。
【古代近東】 植物の神でありまた羊飼いであるタンムズは、群れの保護者である。アミュノスとマゴスは、フェニキア人に牧畜を教えた。
【チベット仏教】ダライ・ラマは、いわば<いと慈悲深き善き牧者>たる観音菩薩の化身といわれる。
【キリスト教】羊飼いは、<善き牧者>キリストとして、キリストの人間性と憐れみの心をあらわし、さらにまた迷える者のとりもどし、を象徴する。
【エジプト】神ラーは「万人の<牧者>」である。エジプト王はその民を導く羊飼いである。
【ギリシア】羊飼いオルフェウスは<善き牧者>で、持物として肩に牡羊あるいは仔山羊を載せている。ヘルメス・クリオフォロスすなわち「雄羊を抱く」ヘルメスも、<善き牧者>である。牧神パンは牧夫であり、神ヘルメス/メルクリウスは魂の牧者である。
【ヒンドゥー教】シヴァ神は牧夫であり、神クリシュナは牛飼いや牛の世話をする若い女たちと結びつけられる。
【イラン】<黄金時代>の王イマは、太陽の目をもつ<善き牧者>で、不死の秘密を握っている。
【イスラム】「「神の栄光は羊飼いたちのあいだにある」。
羊を肩にのせた羊飼いの姿がとても気に入ったので、「世界シンボル辞典」で「羊飼い」を引いてみたら、たいへんなことになってしまいました。羊飼いイメージは、世界中に満ち満ちているようです。うう、どこから手をつけたものか。
魔王アスモデ
●アスモデ
破壊魔神。 (略) 遊戯場の総監を務め、放蕩や過ちの種をまきちらす。 (略) トビアは若い娘サラの体にとりついたアスモデを、魚の肝汁の煙を使って追い払い、天使ラファエルがこれをエジプトの果てに幽閉したという〔旧約聖書『トビア書』〕。 (略) アスモデは地獄で権力を誇る強大な王の一人で、三つの頭を持ち、一つは牡牛、一つは人間、一つは牡羊に似る。尾は蛇、足はガチョウ、炎のような息を吐く。 (略) アスモデは人間に“星まわりの指輪”を与え、透明になる術を教え、幾何学や算術や天文学や工芸術を教授する。宝のありかにも詳しく、かれに宝の発見を強いることもできる。
●説教
悪魔は教会の習慣をなにからなにまで真似るのが好きなので、サバトでは説教も行わせる。魔法使いはみんなこれを聞かねばならない。説教師の役はいつもアスモデが務め、魔女たちの証言によれば卑劣な悪行を説き勧めるという。
怪奇趣味全盛の19世紀フランスで読まれた、コラン・ド・プランシーの「地獄の辞典」から、一部がひつじな悪魔アスモデをご紹介。人に知恵を与え、放蕩を教え、苦手なものは魚の肝です。
石灰岩浮彫の「犠牲の羊」
何に用いられたものであろうか、石版の断片である。場面は、同じ考古館に保存されている類似した石版との比較によって、『創世記』第20章に記されている「イサクの犠牲」の左端の部分であろうと推測されている。 (略)
聖書によると、この羊は「藪に角を引掛けた牡羊」であるが、この石版では、羊はただ立っているだけである。そしてその背中から椰子らしい樹が、大きい葉を三枚つけて突き出ている。
動物の背中から樹が生え伸びているのは、実は東方文化圏で古くから発達した一つの型なのである。 (略)
このような表現は、おそらく動物と植物との間の輪廻転生を意味するのであろう。動物は植物を食べて生き、死んで地に還りまた植物を育てる。
イスタンブール出土の、7世紀の石灰岩浮彫です。前に樹下動物文様のお話をしたことがあるのですが、これはその続きになるでしょうか。
なお、「イサクの犠牲」についてはこちらに。